【大紀元日本3月7日】小学校6年生になって、中学卒業試験にあたるGCSEの科目を意識するようになった。英国では小学校6年、中学5年、高校2年、大学は一般に3年という制度をとっている。初めて英国の学齢を知った時、日本の戦前、戦中の旧制中学と予科がそのまま残っているのか、とヨーロッパの教育制度から米国の教育制度へと変換した戦後の日本に思いを寄せてしまった。
中学5年制というのは悪くない、と最初は思った。日本のように15歳で受験するより、16歳で進路を決める方が少しは思春期も乗り越えられるのではないか。そして専門を絞って大学進学を意識して2年間勉強する。大学4年の最後は就職活動でほとんど授業もないから、3年で十分だ。なんとスッキリした制度だろう。
ところが実際に我が子がこの教育制度を進んでいくうちに、早期に選択を迫られるシステムにかなりの無理があると感じるようになった。
娘の学校では、小中と一貫教育であることを利用して、GCSEの準備を5年間でなく6年間かけることにして、退職寸前のベテランの6年生の担任が、カリキュラムを全て書き直したとのこと。田舎の小さな私立校が生き残るのためのセールスポイントのようだった。
小学校6年生の時点で、漠然とだが、進路を意識させるようになってしまう。今、思いもよらないような職業が10年後には存在しているかもしれないのに、この段階で何が分かるのだろうか。また、子どもの数学嫌いや文章を書くのが苦手という得手、不得手も助長してしまう。個性を伸ばすという意味では優れているが、特に取り立てて優れているわけでもないフツーの子が、オールラウンドの教育が受けられないという弊害がある。
娘の場合もこの範疇で、「何していいか分からない」状態がずっと続いていた。中学の卒業資格試験にあたるGCSEは8教科くらいを選択していた。一応英語、数学などは必須だったが、かなりの選択肢があり、文科系、芸術系の傾向が早くから固まってしまい、柔軟性のある労働者は育んでいないと感じた。英国人の科学系の卒業者が不足しているということも耳にした。
(続く)
著者プロフィール:
1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。
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