【大紀元日本6月6日】鮭は日本で昔から日常的に食されている魚です。朝食によく出てくる焼き鮭や鮭おにぎり、お茶漬けなどは日本人の大好きな食べ物の一つではないでしょうか。一般的に鮭と呼んでいますが、鮭にも多くの種類がありその呼び方も様々です。サーモンは鮭を英語で言う時の呼び名だと思っている方も多いと思いますが、実はそうではありません。おすし屋さんのメニューには、サーモンと鮭と両方あるのです。
日本で販売されている「鮭」は「秋鮭(白鮭)」「銀鮭」「紅鮭」などを指しており、「サーモン」は太平洋鮭(アトランティックサーモン)やニジマスの大型種(サーモントラウト、またはトラウト)、キングサーモン(マスノスケ)を指しています。
英語(イギリス語)でサーモンといえばアトランティックサーモンだけを指し、ヨーロッパにはこれ一種しかないそうです。米語でサーモンといえば太平洋種の総称になります。日本語で言うマス(海洋性のもの、例えば、カラフトマス)もサーモンです。従って、必ずしもサケ=サーモンではないのです。
よく「サケ・マス漁」などと言いますが、同じものなのかと疑問に思っている方も多いことでしょう。マス(鱒)は、サケ目サケ科に属し、日本語名に「マス」がつく魚、または日本で一般にサケ類(ベニザケ、シロザケ、キングサーモン等)と呼ばれる魚以外のサケ科の魚をまとめた総称です。サケとマスの境界が厳密でないため、国により区分方法が異なります。たとえば英語圏でキングサーモンはサケに区分されますが、日本では同じ魚をマスノスケと呼びマスとして区分しています。英語では、サケがsalmon(サーモン)、マスがtrout(トラウト)に対応しており単にtroutと言うと淡水性を指します。
鮭は川で生まれ育ち、海に下って回遊し、また自分の生まれた川に戻ってくる習性があることはご存知だと思いますが、中には海に下らないもの(陸封性)も生息しており、それによって呼び名も変わるということです。
日本の食品衛生法では、さく河性(海に下り、河に戻るもの)のものを「サケ類」、陸封性(海に下らない)のものを「マス類」と表示する義務があります。例えば陸封性のヒメマスとさく河性のベニザケは同じものです。しかし、市場に出荷する際にはヒメマスとベニザケと区別されます。また、キングサーモンは、日本でマスノスケという立派な和名がありますが、上記の理由から最近は市場にキングサーモンという名で出荷されています。
鮭の料理にルイベというものがありますが、これは生の鮭をマイナス20度で凍らせて、スライスして食べます。生の身を凍らせる事が、実は意外な効果を発揮しています。生魚には寄生虫などの問題がありますが、当然鮭にもこの問題があります。鮭にはアニキサスという虫がおり、これが人間の体内に入ると猛烈な腹痛と嘔吐を引き起こします。しかし、このアニキサスは低温に弱く、マイナス20度以下になると死んでしまいます。従って、ルイベにするために一旦冷凍すると、寄生虫の問題がなくなるのです。また、市販されている鮭は脂の多いものが多いのですが、冷凍したときに水分と一緒に脂も落ちて、その分鮭独特の風味が感じられるという効果もあります。ルイベという鮭の料理は、衛生的にも味的にも非常に優れた調理法ということになります。
最近では「サーモン」という名の刺身が出回っているそうです。ここ数十年の間に鮭・マスの養殖が盛んになってきており、ニジマスなどサケ科の魚に寄生虫が付かないように、抗生物質等の入ったエサを与えて養殖しているため刺身として販売されているようです。
鮭は種類によって色や形、脂のノリ、肉質などに違いがあります。代表的な鮭の種類と料理方法をご紹介します。
日本でサケと呼ぶ場合、たいていは白鮭のことを指します。スーパーでは獲れる時期によって時鮭、秋鮭、秋味、鮭児などと言う別名で販売されています。身の赤色が薄く、脂肪分が少なくさっぱりしているので、石狩鍋、あら汁、ちゃんちゃん焼きに合います。炊き込みご飯の具にしても旨みが出て美味しいでしょう。
銀鮭はチリからの養殖物の輸入が多く、年間を通してスーパーでは冷凍物、解凍物、塩蔵サケに加工されたものが販売されています。皮は名前の通り銀色に輝き、身はオレンジかかった薄桃色です。石狩鍋、あら汁、ちゃんちゃん焼きにも合いますが、味にコクがあるのでそのまま塩焼き、またお茶漬けなどがお勧めです。
紅鮭はアラスカ、カナダ、ロシアからの輸入物が多く、スモークサーモンの原料としてもよく使われます。秋になると頭を除く体全体が桃色がかった鮮やかな紅色に染まります。鮭は一般的に赤みが強いほど美味しいと言われ、紅鮭の肉はサケ属の中でも最も赤みが強くとても美味です。銀鮭同様、石狩鍋、あら汁、ちゃんちゃん焼き、塩焼き、お茶漬けなど料理の用途が幅広いのです。
キングサーモンはほとんどがカナダを中心とする輸入物で、多くは養殖魚で、国内産の鮭より大ぶりで脂肪が多いのが特徴です。身が厚いのでソテーやムニエルなどの洋風料理にすると脂がジューシーでボリューム感ある一品になります。ホイル焼きや蒸し物にしても素材の持ち味を楽しめ、さっぱりとした果汁やドレッシングのような酸味が効いたソースともよく合います。
トラウトサーモンはチリ、ノルウェーなどで養殖されたニジマスのことで、身の色はピンクがかったオレンジで、くせがなく万人向けの味です。市場やスーパーなどではトラウトやサーモントラウトと呼ばれており、主に切り身で販売されているほか、コンビニエンスストアにある「鮭のおにぎり」「ますの寿司」「お弁当」などの具材に使われています。そのまま焼いてもよいですが、あっさりした味なのでクリームシチューやマリネ、スパゲティの具材にすると美味しく食べられます。
また、鮭の旬である秋以外の春から夏にかけて採れる鮭は“時知らず”と呼ばれ、(最近では省略されて単に”時鮭”と呼ばれる)卵巣・精巣がまだ成熟しておらず、身肉に脂があるので大変美味とのことです。ロシア北部の河川の生まれで、回遊中に日本の近海で漁獲されるものと考えられています。
また、鮭は4~5年で生まれた川に回帰し、普通に食べている鮭は4~5歳の魚ですが、まれに1万匹に1匹くらいの割合で、1~2歳の鮭(鮭児)が戻ってくることがあるそうです。普通の鮭は、産卵という目的もあって回帰するので比較的疲労した状態で漁獲されますが、鮭児はそんな疲れを持たない鮭で、おのずと味が異なり幻の鮭と言われています。
(文・大鬼)
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