2021年5月29日に掲載した記事を再掲載
カルシウムは、人体に最も多く含まれるミネラルですが、現代人に不足しがちな栄養素の一つでもあります。カルシウムが不足すると、いわゆる「筋肉がつる」痙攣を起こしやすくなるほか、骨粗鬆症の原因にもなるなど、体にさまざまな問題を生じさせます。日常の食事からカルシウムを意識的に補うことが大切です。
夜の就寝中に、突然「足の指がつる」「ふくらはぎがつる」など激痛をともなう痙攣が起きて、飛び起きてしまうことがあります。もし、あなたにそうしたことが頻発するなら、カルシウムをはじめとする、ミネラル不足になっているかも知れません。
カルシウム不足がまねく症状
カルシウムは、骨や歯のもとになる重要な成分であるだけでなく、血液の正常な凝固を助け、神経系を強化し、心臓のリズムを整えるとともに、筋肉の収縮を助けます。また、気分を落ち着かせ、不眠症を予防することができます。カルシウム不足が原因で怒りっぽくなるなど、人の精神状態にも影響することがあります。
人体のカルシウムの99%は骨と歯に存在し、1%だけが全身に分布していますので、言わば骨はカルシウムの貯蔵庫のようなものです。血液中のカルシウムが減少すると、体の甲状腺ホルモンとビタミンDがカルシウムを骨から放出することで、血液中のカルシウムのバランスが保たれます。ところが、血液中のカルシウム不足が長期間にわたると骨が弱くなり、骨粗鬆症や骨折しやすくなるなどの深刻な問題が起こりやすくなります。
カルシウム不足がまねく一般的な症状としては、骨粗鬆症、不安感および不眠症、夜間におきる痙攣などが挙げられます。
台北市にある栄欣骨科医院の主治医・陳怡孜氏によると「多くの人は膝の痛み、あるいは他のところに痛みが出ると、骨粗鬆症かと勘違いしますが、この疾病の大部分は明らかな症状がないのです。実際に骨折して来院、または健康診断の時に、初めて自分が骨粗鬆症であることが分かります」と言います。
カルシウムが不足すると不安感が増し、精神不安定から不眠症になる場合もあります。しかし、カルシウムと同様、カリウムも神経を安定させる重要な物質の1つであるため、カリウム不足の場合も同様の症状が出ます。
ただ、就寝中に「ふくらはぎがつる」という症状が出た場合は、カルシウム不足の可能性が高いです。陳怡孜氏の説明によると、「地球の引力によって廃血が下腿に溜まるのと、カルシウム不足のため神経が不安定になった夜間に、ふくらはぎが痙攣しやすくなるのです」。そのような場合は、すでに骨粗鬆症になっている可能性もあるため、骨密度の検査を受けることをお薦めする、と陳氏は言います。
カルシウム摂取を特に要する人
次の4つのカテゴリーに属する人は、カルシウム摂取を特に必要としますので、普段の食事のなかに、カルシウムを多く含む食材を積極的に取り入れましょう。
高齢者
骨密度は20~30歳頃にピークを迎え、その後は徐々に減少します。加齢とともに骨量が減少して骨が弱くなる上、バランスを崩して転倒する危険性も高まるため、努めて骨を守るよう心がけてください。
更年期の女性
女性は閉経後、ホルモンの減少により骨量の減少が加速します。
甲状腺および副甲状腺機能障害のある患者
甲状腺および副甲状腺は、体のカルシウムおよびリンのバランスを調節します。その二つの機能が、亢進しても低下しても、血中へのカルシウム漏出を引き起こします。
腎臓病の人
腎臓の機能が低下すると、血液中にリンが蓄積し始めます。過剰なリンを排出するために、体が副甲状腺ホルモンを多く分泌するよう刺激します。しかし、副甲状腺ホルモンが増加すると、骨からカルシウムが失われます。
カルシウム吸収を助けるビタミンCとD3
カルシウムを多く含む食品としては、牛乳、豆類、干し豆、豆腐、濃い緑色の野菜、ナッツ類などがあります。寝る前に、温かい牛乳を飲むといいですね。牛乳のカルシウムには、気分をリラックスさせて睡眠を補助する効果があります。良質な睡眠中に分泌される成長ホルモンも、カルシウムを吸収しやすくすると言われています。
カルシウムを効率よく補充するには、カルシウム吸収を高める2大栄養素が欠かせません。それが、ビタミンCとビタミンD3です。食事の後にはキウイ、パパイヤ、トマト、イチゴ、柑橘類などのビタミンCを豊富に含む果物やジュースを摂取します。
胃に入ったカルシウムが胃の粘膜を通過して血中に吸収されるために、ビタミンD3が必要になります。ビタミンD3が欠乏すると、カルシウムを多く摂取しても胃で吸収されず、小腸から排出されます。日光によく当たり、肝臓や腎臓の機能が正常であれば、体はビタミンD3を自ら合成しますので、欠乏症になることはありません。しかし、現代人は日光を浴びる機会が少なくなっていることと、加齢によって肝臓、腎臓の機能が悪くなることは、すべてビタミンD3の合成に影響します。
カルシウム吸収を妨げる要注意食品
塩分の多い食品
- 塩辛い食事やナトリウムを多く含む加工食品。
タンパク質の摂りすぎ
- 肉類を多く摂取するとリンを過剰に摂り、カルシウムとのバランスが崩れて吸収が低下。
脂っこい食品
- 油脂がカルシウムと結合し、吸収を妨げる可能性あり。
シュウ酸を含む食品やカフェイン飲料
- シュウ酸(ほうれん草など)やカフェインを含む飲み物(濃いお茶、コーヒー、炭酸飲料、エナジードリンク)がカルシウム吸収を低下させる。
- ポイント:これらの飲み物は食事後1時間以上たってから飲むのが理想的。
(翻訳編集 鳥飼聡)
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