58歳の劉さんは、夫の車いすを押して自宅マンションの廊下を進んでいたとき、突然、腰に鋭く突き刺すような激しい痛みを感じました。まっすぐ立てなくなり、病院で検査を受けたところ、予想外にも腰椎圧迫骨折と診断されました。
もう一人の患者である62歳の陳さんは、地域イベントで1時間あまり立っていた際に強い腰痛を感じ、椅子に崩れ落ちました。その後、彼女も腰椎骨折と診断されました。
この2人はいずれも重度の骨粗しょう症を患っており、日常的な負荷だけでも骨がつぶれるように崩れてしまう状態でした。ごく普通の動作が、腰椎骨折を引き起こす原因となっていたのです。
加齢とともに、骨粗しょう症およびそれに関連する骨折の有病率は増加し続けています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、2017~2018年において、50歳以上のアメリカ人のうち12.6%が骨粗しょう症を患い、43.1%が骨量減少(骨折リスクを大きく高める状態)に該当していました。
骨粗しょう症の症状
骨粗しょう症の主な臨床症状には、以下のようなものがあります。
- 腰痛:長時間座ったり立ったり、同じ姿勢を続けることで痛みが強くなります。
- 脊椎の変形:骨密度が低下すると脊椎が骨折や変形を起こしやすくなり、背中が丸くなります。重症の場合、仰向けに寝られなくなり、睡眠の質に影響することがあります。
- 臓器の圧迫:前かがみの姿勢により胸腔が圧迫され、呼吸困難、動悸、腹部膨満感、消化不良などが起こることがあります。
- 神経の圧迫:腰椎骨折によって神経が圧迫され、腰や脚に痛みが生じることがあります。
- 骨折:骨粗しょう症では、股関節、脊椎、手首などが、軽い転倒や日常のちょっとした動作でも骨折しやすくなります。2024年の研究では、65歳以上の人が股関節骨折を起こした場合、1年以内の死亡率が最大35.4%に達することが示されています。
これらの症状のいずれか、または複数を抱える患者は、痛みを和らげるために長期間にわたって鎮痛薬に頼ることが多く、その結果、胃、心臓、腎臓などに悪影響を及ぼす副作用が起こる可能性があります。
中医学では、「腎は骨を主る」とされ、骨粗しょう症は腎のエネルギー不足と深く関係していると考えられています。腎に蓄えられる「精(生命エネルギー)」は生命活動の根本であり、老化にも影響するとされます。年齢を重ねるにつれて腎のエネルギーは衰え、それが骨粗しょう症の発症につながると考えられています。
腎のエネルギーと骨を強化する運動
腎機能を高め、老化や骨粗しょう症の進行を緩やかにするためには、穏やかな運動、マッサージ、そしてバランスの取れた食事を日常生活に取り入れることが大切です。
1.かかと落とし運動
方法:つま先立ちになってかかとを持ち上げ、その後、しっかりと床にかかとを落とします。同時に両手を腰に当て、腰をこするようにします。1日10分を目安に行ってください。
効果:かかとを床に打ち付けることで、足元から体全体、さらには頭部にまで力が伝わります。これにより骨の成長が刺激され、骨密度が高まる可能性があります。縄跳びやボール遊びなどの上下運動が子どもの身長の伸びを促すのと同じ原理です。
腰をこすり、つま先立ちになる動作は、腎に関係するツボを刺激します。中医学では、臓器のエネルギーは体表にある特定のポイント、すなわちツボを通って流れると考えられています。
腰部は腎と対応しており、特に腎兪(じんゆ)というツボがあります。この部分をマッサージして温めることで、腎のエネルギーが養われるとされています。また、足の裏には湧泉(ゆうせん)というツボがあり、これは腎経(腎のエネルギーの通り道)の起点です。つま先立ちになることでこのツボが刺激されます。さらに、この動作でふくらはぎの筋肉を収縮させることにより、腎が強化され、血糖や脂質代謝の改善にも役立つ可能性があります。
かかと落とし運動は簡単で高齢者にも比較的安全であり、長期的な骨のサポートに適しています。
2.ひざ曲げ運動
方法:かかとを約15度外側に開き、少し間隔をあけて立ちます。その状態で、軽くひざを曲げる動作(浅いスクワット)を行います。1セット10~15回を目安に、1日2~3セット行ってください。ひざが弱い方は、5回から始めて徐々に回数を増やします。
効果:ひざ曲げ運動は骨密度を高め、太ももやふくらはぎの筋肉を強化し、持久力を向上させ、歩行力を高める可能性があります。変形性ひざ関節症などでひざに痛みがあり歩くのがつらい方でも、浅いスクワットを行うことで、ひざ関節を活性化し、動かしやすくする効果が期待できます。
この運動を行う際、左脚のほうが長い場合は左脚をやや後ろに、右脚のほうが長い場合は右脚を少し後ろに引いて立ちます。この調整により股関節の位置が整い、骨盤の傾きが矯正され、脚の長さの左右差の改善につながる可能性があります。
食事療法
定期的な運動に加えて、バランスの取れた食事は骨の修復を助け、骨を強くするために欠かせない栄養素を供給します。特におすすめなのが黒ごまやくるみで、いずれも腎を養う食品として知られています。黒ごまはカルシウムも豊富です。
黒ごまとくるみのパウダー
材料:
- 黒ごま 250g
- くるみ 250g
- 黒砂糖 50g
作り方:
黒ごまを乾煎りし、くるみと一緒に細かい粉末にします。そこに黒砂糖を加えてよく混ぜ、容器に保存します。
摂取方法:1回25gを、ぬるま湯で練ってペースト状にし、1日2回摂取します。
骨の健康を保つため、煮干しや干しエビなど、カルシウムが豊富な食品を食事に取り入れてください。また、ビタミンDが豊富なしいたけは、カルシウムの吸収を助けます。
適度な日光浴も有効で、皮膚で活性型ビタミンDが生成され、腸でのカルシウムやリンの吸収が促進されるとともに、骨形成が助けられます。
喫煙、過度の飲酒、カフェイン、炭酸飲料はカルシウムの流出を早めるため、できるだけ避けてください。また、夜更かしや慢性的なストレスも全身性炎症を引き起こし、骨密度の低下をさらに進める原因となるため、注意が必要です。
(翻訳編集 井田千景)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。