最近、「日本式ウォーキング」という健康法が海外のインターネット上で話題になっています。特別な器具も使わず、短時間で高い健康効果が期待できるこのウォーキング法について、専門家が詳しく解説しています。
イギリス・ハル大学の臨床運動生理学者、ショーン・ピマー氏は、ウェブメディア「The Conversation」への寄稿で、このウォーキング法は信州大学の能勢博教授と増木静江准教授によって考案されたものであり、「早歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に行うインターバル形式の歩き方であると紹介しました。
ピマー氏によれば、「日本式ウォーキング」では、ややきついと感じる速歩を3分間行い、その後に普通のペースで3分間歩く、というサイクルを交互に繰り返します。1回の運動時間は30分以上を目安とし、週に4回の実施が基本とされています。
「ややきつい」とは、短い会話はできるけれど、長い会話を続けるのは難しい程度の運動強度です。一方、「普通の歩行」は、会話が問題なくできるほど楽なペースで、息が少し上がるくらいが目安です。
このウォーキング法は「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」と似た効果があるとされ、「高強度ウォーキング」とも呼ばれますが、HIITよりは負担が軽く、取り組みやすい内容となっています。
やり方もとてもシンプルで、必要なのはストップウォッチ(またはタイマー)と歩くためのスペースだけです。特別な準備も不要で、「1日1万歩」といった目標よりも短時間で済むため、多くの人にとって始めやすいという利点があります。

研究結果は?
ピマー氏は、「日本式ウォーキング」には明確な健康効果があると述べています。2007年に発表された日本の研究では、この歩行法と「毎日8000歩の低強度な連続歩行」を比較しました。
その結果、「日本式ウォーキング」を行ったグループでは、体重の大幅な減少と血圧の明確な低下が見られ、いずれも低強度の歩行グループよりも顕著でした。
さらに、脚力や全身の体力の測定でも、「日本式ウォーキング」グループの改善幅は、通常の速さで連続して歩いたグループより優れていたのです。
また、2018年に発表された別の長期研究では、「日本式ウォーキング」が加齢に伴う筋力や体力の低下を予防できることが確認されました。これらの改善効果は、「日本式ウォーキング」が寿命延長にも貢献する可能性を示唆していますが、直接的に寿命との関係を証明する研究は、現時点ではまだ行われていません。
この新しい健康法について、ピマー氏はいくつかの注意点も挙げています。
まず第一に、「日本式ウォーキング」はすべての人に適しているわけではありません。「1日〇歩」など歩数を目標にする方法のほうが、シンプルで分かりやすく、魅力的に感じる方も多くいます。
第二に、既存の研究では「一定の歩数を毎日歩く」ことが、寿命の延伸に有効であることが確認されています。たとえば、60歳以上の人では1日6000~8000歩、60歳未満では8000~10000歩が推奨されていますが、「日本式ウォーキング」自体にはまだ十分な実証データがないという点も留意が必要です。
第三に、重要なのは「どの運動をするか」よりも「運動の頻度と強度」であるということです。中~高強度の身体活動を定期的に行っている人は、長寿である傾向があるとする研究もありますが、これは1回あたりの運動時間とはあまり関係がないことが分かっています。
つまり、中〜高強度の運動を定期的に継続し、習慣化することが大切です。そして、それが「日本式ウォーキング」であれば、有力な選択肢となるでしょう。
なお、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、ほとんどの成人に対し、「週あたり150分の中強度運動」または「75分の高強度運動」を推奨しています。時折スピードを上げて歩くことでも、この目標を達成する手助けになるのです。
(翻訳編集 正道勇)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。