千回の彫刻と研磨に耐える

【大紀元日本10月2日】古代中国の文書「三字経」には、次のように書かれています。「玉(たま)琢(みが)かざれば器(うつわ)を成さず」。人は人生の中で、時に痛みや苦しみを味わうことがあります。それはなかなか辛いプロセスですが、それを乗り越えた時、新たな世界が開けると古代の物語は伝えています。

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昔、ある町に立派な寺が建立された。とても美しく重厚な寺だったが、大仏の像だけがなかった。そこで、信者たちは有名な彫刻家に大仏の像を制作してもらうことにした。

彫刻家は山に上ると、大仏になるのにふさわしいを探した。ようやく見つけた石は美しかったが大きすぎたため、彫刻家はそれを二つに割ると、早速片方の石に刀をあてて彫り始めた。すると、彫られている石は彫刻家に向かって不満をこぼした。「彫られるのは、本当に痛いし辛い。もう少し、優しく彫れないのか?私は風雨を耐えてきたが、こんなに辛いのは初めてだ。あんたは、私を大仏に彫るというが、本当なのか?」彫刻家は答えた。「忍耐がそのプロセスだ。もしお前が決心すれば、この辛苦の後に必ず新しい世界が開ける。私を信じ、耐え続けなさい」

石はしばらく考えると、彫刻家に聞いた。

「いつ、その大仏は完成するのか?」

「たった今彫り始めたばかりだ。30日間耐えなさい。その後、もし人々がお前の見栄えに満足しなければ、さらに彫り続け、仕上げに時間を要するだろう」

大仏の彫像になれたらどんなに素晴らしいだろう、と石は考えた。しかし、それに至るまでの苦しみは容易ではない。二時間ほど痛みに耐えた後、ついに我慢できなくなった。「もういやだ。刀で私を彫るのをやめてくれないか。こんな痛みにはもう耐えられない」

彫刻家は仕方なく、もう片方の石を彫ることにした。すると、この石はちっとも不満を漏らさない。彫刻家は石に話しかけた。

「お前は痛くないのか?」

「私は簡単にあきらめたりはしない」

「最初の石は、優しく彫ってくれと言っていた。お前もそう思うか?」

「いや、優しく彫られたら、彫像の見栄えが悪くなるかもしれない。そうすれば、また彫刻のやり直しだ。初めから、きちんと彫ってくれた方が時間を無駄にしなくて済む」

彫刻家は石の強靭な意志に心を打たれ、懸命に大仏の姿を彫り始めた。30日間の耐え難い苦しみの後、石は荘厳な大仏の姿に生まれ変わった。

間もなく、大仏の彫像は寺の祭壇に置かれ、大勢の人々が毎日参拝に訪れた。ある日、寺の石床となった最初の石が、大仏に向かって言った。「お前はどうしてそのような高い所におかれ、人々から敬われているのか。なぜ私は毎日、人々から踏みつけにされなければならないのか?」

大仏になった石は答えた。「それは簡単だ。お前は容易な道を選び、石床になった。しかし、私は苦を舐める道を選び、大仏になったのだ」

安易な道と苦難の道、どちらを選ぶかは自分次第。いずれの道を選んでも、必ずそれに見合うだけの結果が待っているだろう。

 (翻訳編集・郭丹丹)