【大紀元日本8月13日】口は災いの元とはよく言ったもので、思いつくままに発したことばは往々にして大きな災いを招く。橋下徹大阪市長の慰安婦に関する問題発言然り、猪瀬東京都知事のイスラム諸国を貶める発言など、枚挙に暇がない。おそらくそれが本心であろうが、「覆水盆に返らず」を肝に銘じて、発する前に熟慮せねばならない。もちろん、本心を改めることができればそれに越したことはないが。
「覆水盆に返らず」ということわざは、中国の周の時代の重臣・太公望にまつわる逸話を出典とする。
太公望は妻を娶ったが、毎日読書ばかりして生活のことを顧みず、貧しい生活が続いたことから、妻の馬氏は愛想を尽かして家を出て行った。ところが、その後、太公望が斉の国に封ぜられたことから、馬氏は再び太公望の妻になりたいと願い出た。
そこで、太公望は、鉢に入った水を地面にこぼして、馬氏にその水を鉢に戻すよう命じたが、もちろんのこと、馬氏はただただ泥をつかむだけであった。
太公望は馬氏に言った。「お前は一度私から離れておいて、再び一緒になろうと言うのか。こぼれた水はどうにも取り戻せないものなのだ」
(拾遺記)
「こぼれた水はどうにも取り戻せない」の原文は『覆水難収』(覆水収め難し、覆:こぼす)で、現代中国語でも「覆水盆に返らず」に相当する四字熟語として使われる。
ところで、「太公望は鉢に入った水を地面にこぼした」の原文は、『太公取水一盆,傾於地』(太公、水を一盆取りて地に傾ける)となっている。つまり、中国語の『盆』は日本の「お盆」のように平たいものではなく、昔も今も鉢やたらいのような深みのある容器である。ということは、上の逸話から日本独自に生み出されたと考えられる「覆水盆に返らず」の「盆」も、中国の『盆』と考えるのが妥当であろう。
(瀬戸)
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