【大紀元日本1月10日】
ラティンバはすぐに尊者の面前に駆け寄って抱きついて泣いた。弟子や施主たちが祭壇の周りを囲み、尊者の遺体はまだ倒れずに、八葉の蓮華の形をした炎の中で座っていた。尊者は、右手で説法の印を結びながら、その指先を下にして炎に向け、左手で頬を覆いつつ、唱歌の姿勢をとって最後にラティンバと弟子たちに言った。「君たちは、この老骨の最後の歌を聴くがいい」
私の愛弟子ラティンバよ 最後の歌を聴くがいい
三界の輪廻は火の海に似て 人身の一切には実体がない
衣食と名利に奔走し 世事は永遠にやむことなし
名利は捨てるのだラティンバよ
世事の一切は幻にして 心性を修煉することが鍵となる
心を身のために使えば 仏法の真実を永遠に証明できない
心性を守るのだラティンバよ
物を捨てることが奥義であり 返本帰真が真の知恵
世事は無常で追いがたく 心を修め欲を絶つことが真諦だ
執着を去れラティンバよ!
六道輪廻は苦中の苦 悪業をいかにして取り除くのか
貪嗔と煩悩を除かずして 仏国聖果は永遠に取ることができない
貪嗔は捨てるのだラティンバよ!
私が今君に伝えた歌は 私の最後の遺言だ
これより他に伝える法はなく これで修めるのだ君たちは
尊者は歌い終えると、また涅槃へと入っていった。しばらくの間、祭壇からは無限の光明が放出され、四方形の光り輝く宮殿となった。その内側には、各種の光る傘蓋、彩霞、寶幢などが盛大に供養され、荘厳無比であった。無数の天女たちがその中から顕れ、美しい音楽の中で舞い踊った。祭壇の上空には、天人と天女たちが甘露のつまった宝瓶を持ち、尊者に供養していた。このとき、空中には無数の空行と神々が充満し、彼らも祭壇の斉唱にそって賛歌を捧げていた。
しばらくして、天はだんだんと暗くなり、祭壇の火も徐々に消えていった。しかし祭壇の上には、一片の光明が出現している。皆が奇怪に思って祭壇のうちを覗いてみると、祭壇の中央には光る宝塔が出現していた。その宝塔の中に、ある人には金剛力士が見え、ある人には身・口・意の字形が見え、ある人には金色の光明が一筋見え、ある人には海水が見え、ある人には丸い烈火が見え、ある人には何も見えなかった。
最後に弟子たちは、祭壇の門を開けて熱気を逃がし、翌日に舎利子を受け取れるよう願った。その晩、皆は祭壇の方角に頭を向けて眠りについた。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。