李嘉誠氏、巨額寄付した大学起工式でスピーチ
香港一の富豪・李嘉誠が作る「李嘉誠基金会」からの多額の寄付で創設した広東イスラエル工科大学の起工式が、12月16日に中国汕頭市で催され、出席した李氏は式典でスピーチした。胡春華広東省党書記、朱小丹省長、イスラエル前首相のシモン・ペレス氏などが顔をそろえた。
同大学は、汕頭大学とイスラエルのテクニオン・イスラエル工科大学が共同で設立。李嘉誠基金会が1億3000万ドル(約157億3400万円)を寄付し、広東省と汕頭市が9億元(約168億円)を出資した。正式な開校は2016年9月を予定している。
李氏は、式典で次のように語った。「テクニオン大学の設立者の1人であるアインシュタインは『人生には2つの道しかない。1つは、世の中に奇跡などないとみなすこと。もう1つは、存在するもの全てが奇跡なのだと信じること』。87歳の私は、今その意味を身にしみて感じている。希望に満ちた未来を創造するために、私はこれからも歩み続ける。奇跡は待つだけでなく、1人1人が起こすものだ」
李嘉誠氏、中国本土での大学設立は3度め
汕頭大学は、広東省潮州出身の李氏の寄付で1981年に創設された総合大学。テクニオン・イスラエル工科大学はイスラエル最古の大学で、技術研究と教育水準は米マサチューセッツ工科大学に比肩して世界最高峰といわれる名門だ。
李氏にとって、中国での大学の設立はこれで3度目となる。これまで汕頭大学や中国初のプライベート・ビジネス・スクールとなった長江商学院の設立時に多大な資金援助を行ってきた。
また同日午後、李氏は汕頭大学で、金融・経済情報サイト「財新網」を運営する財新伝媒の胡舒立編集長と公開対談を行った。テーマは「イノベーション志向と未来の教育」。
この胡編集長と、今回の式典に出席した胡春華広東省総書記は、胡錦濤前主席と習近平主席にとても近い人物と言われている。
李嘉誠氏を「攻撃」した新華社 背後に江沢民派か
中国経済の成長が減速するなか、李氏が大陸に保有する資産の投げ売りを続けて経済的な悲観論や不安感をあおったとして、新華社通信は9月12日付けのコラムで「李嘉誠を逃がすな」「恩知らず」と強く批判した。李氏に対する国営メディアの痛烈な言葉は、波紋を呼んだ。
これに対して李氏は9月末に「事実の歪曲に恐怖すら感じる。非常に残念だ」とコメントを発表した。今まで沈黙を守ってきたのは、自身の発言が国際社会からの注目が集まり、当時、訪米予定の習氏の存在感が薄まる恐れがあるだけでなく、財界や投資家の間で要らぬ憶測と不安を招いてしまうことも憂慮したためだと釈明した。
10月14日、李嘉誠氏の胸のうちは、ネットで公開された手紙で明かされた。新華社の批判には心を痛めているが、困難(誹謗中傷)を恐れてはいないということ。もう一つは、国の改革開放路線を明確にしている習近平氏を支持していること。
また、今回の李氏に対するメディアを通じた批判は、この改革開放路線に逆らう「居座り続ける陰の勢力」によるものとの認識を明かした。
時事評論家の楊寧氏は、李嘉誠氏の言う「居座り続ける陰の勢力」とは習近平氏の改革・腐敗撲滅運動に反対する「反動勢力」を指すとみており、中央政治局常務委員で党中央宣伝部長を、長年にわたり務めてきた江沢民派の劉雲山氏が深く関わっているはずだと推測した。
(翻訳編集・桜井信一)