「世渡り上手」北京の実業家、中国共産党のタブーを米国で証言 商売敵をけん制
中国高官と強い繋がりを持つ中国の富豪・郭文貴氏は、中国で違法な臓器取引が行われていると、米国の中国語メディアや自身のSNSで明かした。中国共産党政権が弾圧する気功団体・法輪功が絡むこの問題は、党の最高レベルのタブーとされ、厳しい情報検閲の対象となっている。中国政経の内情に精通した人物が公にこの問題について明かすのは、今回が初めて。
「生きた臓器バンク」に言及
現在、米国に住む郭文貴氏は 12 日、大紀元の取材に応え、知人の実業家・李友氏に関する情報を伝えた。この李友氏は、公安部門から提示された「何十人分もの」臓器リストから、臓器を選ぶことが可能だったという。
これは、中国の収容所が臓器移植用の「生きた臓器バンク」となっているとの国際調査の指摘を裏付ける。この「臓器のリスト」を移植希望患者へ見せて選択させることは、中国で腎臓移植を受けた台湾の患者も同じ体験をしていることを、臓器狩り問題を取り上げたドキュメンタリー映画『人狩り』は伝えている。
さらに、李友氏が大株主である北京大学国際病院からも臓器リストが提供されており、同病院でも「臓器移植ビジネス」が行われていると、郭文貴氏は考えている。
政経癒着の中国で渡り歩いた実業家が明かす内幕
北京の不動産と投資管理会社を経営している実業家・郭文貴氏。中国では大きな商売の成功には、政府高官との繋がりが不可欠で、これをこなしてきた郭文貴氏は「世渡り上手」な富豪と知られている。北京オリンピックに先駆けて「鳥の巣スタジアム」周辺地区で不動産投資に成功し、巨万の富を得た。
いっぽうで、郭文貴氏の成功の裏には政経癒着の不正があり、「敵」を多く抱え、告発者も多い。かつての友人だった実業家・李友氏とは2013年にトラブルが生じて、互いを反目するようになった。李友氏は、郭文貴氏の最大の後ろ盾であったとされる国家安全部の副部長・馬健氏を告発し、2015年初めに失脚させた。
このたび、李友氏が臓器移植を希望しているとの情報は、郭文貴氏が、「敵」である李友氏につけた自身のスパイから入手した情報だという。郭文貴氏は大紀元のインタビューで「(自分側のスパイによると)臓器リストを持ってきた公安部の話では、臓器は法輪功学習者かチベット人から」と述べた。
郭文貴氏および李友氏と利益関係にあったとされる中国共産党の幹部の多くは、両サイドからの告発で失脚、逮捕されている。「食うか食われるか」―。この動きから逃れるために、郭文貴氏は米国へ渡ったと推測されている。財新ネットによれば、以前も債務返済を避けるため、郭文貴氏は国外逃亡しているという。
最高のタブーに触れ、敵をけん制する狙いか
郭文貴氏は、訪米以後も中国でのビジネスを続けてきたが、トラブルが生じたため、商売敵への「復讐のため」に在米の中国語メディアに中国の内部情報を暴露し始めた。
郭文貴氏はまた、中国共産党政権が弾圧政策をとる法輪功について「なぜ迫害するのか理解できない」と述べ、法輪功の理念を支持することも自身のTwitterで表明した。
共産党政権にとって「臓器狩り」や「法輪功弾圧」は、最高レベルのタブーとされる。大紀元の評論員・横河は、このことを暴露することで、さらなる内部情報を握っていることをアピールし、脅迫などで圧力をかける共産党幹部や商売敵をけん制する狙いがあると推測する。
同評論員・夏小強は、世界的な人道犯罪であるこの「タブー」の暴露は、中国共産党高層との繋がりを持つ人物側から行われたことに「強いインパクトがある」と指摘。問題停止に向けた一歩につながるため、海外に渡った中国内情通の取るべき行動として「模範的な一例」と述べた。
消息筋「内情明かされて政策が水の泡」
19 日までに、匿名の消息筋は大紀元に対し、中国政府は政策の一つとして「臓器狩り」問題が持ち上がることによる国際的な批判を回避しようとしているが、郭文貴氏による暴露で、当局の努力が「水の泡になる」と述べた。
黄潔夫・元衛生部副部長で中国臓器提供移植委員会元代表は、3月5日~15日まで開かれていた両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)に出席し、中国の臓器提供システムの改善の成果をアピールした。また、バチカンで開かれた臓器取引と移植ツーリズムに関する国際サミットでは、ドナーシステムの見直しなどで「臓器狩り」の疑いの払しょくを図っていた。
臓器狩りとは
カナダ人弁護士デービッド・マタス氏、同政府官僚デービッド・キルガー氏、米ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏による国際調査報告書で、中国の臓器違法取引が政府、公安、病院を含めた国家規模で行われていると明らかにされた。
調査によると、年間の臓器移植件数は衛生部の公表件数 1 万件を上回る6~10 万件と推計され、ほとんどのドナーは身元不明。臓器は、収容所にいる法輪功学習者をはじめとした「良心の囚人」から強制的に摘出されたと考えられており、収容所は「生きた臓器バンク」と化している、と報告書は伝えている。
報告によると、臓器を抜き取られたドナーは、証拠隠滅のために焼却処理されるという。この臓器奪取により死亡した者は、ドナーと患者との厳しい適性検査を通過する割合が10倍とされる移植手術の特徴から、年間移植件数の数倍と推計される。
(翻訳編集・佐渡 道世)