チンパンジーは、私たちの想像を超える優れた記憶力と友愛の情を持っているようです。南フロリダ州動物園に住むチンパンジーたちは、18年前に自分たちを助けてくれたアメリカ人女性を覚えていました。 米公共放送サービス(PBS)が制作したドキュメンタリー「ザ・ウィズダム・オブ・ザ・ワイルド(The Wisdon of the Wild)」が感動の再会を伝えています。
1974年、肝炎ワクチンの研究用として実験に利用されたチンパンジーたちは、殺処分される運命にありました。当時、リンダ・コーブナー(Linda Koebner)さんはまだ学生でしたが、保護のために奔走し、6頭のチンパンジーを解放することに成功しました。
実験用として育てられたチンパンジーたちは、屋外に出たことがありません。コーブナーさんによれば、チンパンジーたちは「外の風に吹かれたこともなければ、日差しに照らされたこともない」ため、檻から出るのを恐れているようでした。
コーブナーさんは4年の歳月をかけて、つきっきりでチンパンジーたちの世話をしました。少しずつチンパンジーは繁殖して群れを形成し、自立できるようになりました。自由な生活に慣れたころ、彼女はチンパンジーたちと別れました。
18年が経ち、コーブナーさんは彼らに会いに行くことにしました。チンパンジーたちはすでに野生化し、彼女のことを覚えていないかもしれません。彼女が連れて行ったチンパンジーのうち、「スイング」と「ドール」の2頭がまだ生存していました。
彼女はスイングを見つけると、「長い時が過ぎたけど、皆とても元気ね」「私のことを覚えてる?」と声をかけました。
スイングは、体を揺らしながらずっと彼女を見つめていました。コーブナーさんがボートに乗って小川を渡り岸に着くと、スイングは満面の笑みで腕を伸ばし、歓迎のポーズで出迎えました。ドールも駆け寄ってきて彼女と抱き合いました。コーブナーさんは涙が止まらず感無量な様子。彼女とチンパンジーたちの絆はずっと変わっていなかったのです。
南フロリダ州動物園に棲む30頭以上のチンパンジーは、それぞれが暗い過去を背負っています。小さいときにペットとして飼われましたが、大きく成長すると扱いにくいということで捨てられたものもいれば、研究用として飼われ、用がなくなったあと捨てられたものもいます。ポリオ(小児まひ)のワクチン研究に使われ、片足に障害を負ったチンパンジーもいます。
動物にも感情や思想があり、苦痛も喜びも感じるし、人間と同じように自由と尊厳を守るべきだと考えるコーブナーさん。チンパンジーたちが仲間と一緒に生活できる南フロリダ州動物園をモデルケースとして、今後も展開していきたいと話しています。彼女は2004年、ルイジアナ州で非営利動物保護施設「チンプ・ヘブン(Chimp Haven)」を設立し、薬物と伝染病研究の実験に使用され、不用となった300頭のチンパンジーたちを保護しています。
(翻訳編集・豊山)
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