性的暴行事件で対応追われる北京大、学生らの反発は「政治運動」

中国国内世論は今、20年前教授から性的暴行を受けた女子大生の自殺事件をめぐって、大学側の対応に対して批判が高まっている。中国当局はすでに、北京大の関連投稿などに厳しいネット規制を敷いた。北京大内部では、同事件をめぐる学生らの活動を「政治運動」と定義した。

同大学外国語学部に通う女子学生、岳昕氏は今月上旬、20年前の事件について、大学側に情報公開を求めた。4年生の岳氏は23日、SNSを通じて、学校側から報復を受けたことと、本人も家族も強い圧力をかけられたことを明かした。その後、中国国内世論が大きく注目した。

当局のネット検閲で、ソーシャルメディア「微博」で、「北京大」で検索すると、中国共産党機関紙・人民日報の評論記事しか出てこない。

中国著名ジャーナリスト、高瑜氏はSNSで、「北京大学の党委員会は岳氏らの活動と岳氏への声援活動について、学生運動の性質を持つ政治運動だと認定した」と投稿した。

23日、岳昕氏がSNSで北京大学側に圧力をかけられたと明かした後、岳氏を応援する北京大の学生らがキャンパス内で、「勇士・岳昕さんを声援する」との壁新聞を貼り出し、大学側に対して「何を恐れているのか」と問い詰めた。大学側はその後、壁新聞を撤去した。

また一部の教職員も、学校側の一連の対応に不満を持っている。同大学法学部の賀衛方教授は4月下旬、米紙・ニューヨークタイムズの取材に対して、多くの教職員が、名門校である北京大は高い透明性および信用力を維持しなければならないと考えていると述べた。

同大のOBもSNSを通じて、岳氏を支援する署名活動を呼び掛けた。しかし、ネット規制当局はこの呼び掛けを直ちに削除した。

「学生らに責任転嫁」と「#MeToo」運動

北京大出身の時事評論家、胡平氏は、「大学側が、今回の事件を政治運動と認定したのは、学生たちに責任をなすりつける狙いがある。同大は20年前の性的暴行事件を隠ぺいしようとしている」と指摘した。

胡氏は、隠ぺいの理由について、現在世界各国で広がっているセクハラ告発運動「#MeToo」と関係があるとの見方を示した。

胡氏によると、2014年に中国の政府機関「中華全国婦人連合会(全国婦連)」が、北京と南京の各大学の学生を対象に行った調査では、セクハラ行為を受けたとした女子大生は全体の57%を占めるとの結果を得た。胡平氏は、全国的にセクハラや性的暴行被害を受けた女子大生の数は非常に多いと推測した。

「この背景で、校内での『#MeToo』運動が広がれば、収拾のつかない社会運動に発展する可能性が高いと、北京大が危惧していたのだろう。中国当局も、こういった政権を揺るがしかねない不安要因を絶対に許さないからだ」

5月4日に創設120周年という重要イベントを控えている北京大学は、「革命」と深いつながりがある。

 

1898年、中国初の国立総合大学として設立された。当初、京師大学堂と呼ばれた。1912年、アジアで初めての共和制国家「中華民国」を誕生させた辛亥革命を機に、「北京大学」に変更された。中国の現代史を切り開いた「新民主主義革命」の出発点である1919年の五・四運動の口火を担った大学としても知られている。

また、6月4日は1989年に起きた大規模な民主化運動「六四天安門事件」の29周年記念日にあたる。当局は神経をとがらせている。

当局は、ネット規制を強化した上、報道規制も敷いた。

中国政府系メディア「中国青年報」電子版が4月26日に掲載した記事は、2016年の『中国の大学の透明性指数報告』で、北京大は上位50校にランクインしなかったと示した。また、記事は「教育部が要求する情報公開に関して、北京大の努力が足りないと専門家は指摘した。一部の教職員と学生は、学校側に情報公開を求めると、逆に圧力をかけられたと訴えた」とした。

記事はその後、取り下げられ、画面ではその部分が空欄になっていた。

(記者・駱亜、翻訳編集・張哲)

 

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