アングル:究極の未開市場か、雪解けで中国が北朝鮮不動産に食指
[北京 2日 ロイター] – 中国の不動産投機筋は、北朝鮮情勢が急速に好転する方に賭け始めている。北朝鮮と接する遼寧省丹東市の土地価格は上昇し、世界で最も孤立する国の不動産に対する関心をかき立ててさえいる。
中国の不動産投資サイト「Uoolu.com」は4月下旬、北朝鮮の不動産に関心のある中国人投資家向けのガイドを発表。携帯メッセージアプリ「微信(WeChat)」で人気のあるアカウントも最近、北朝鮮の住宅市場に関する記事を投稿している。
「北朝鮮の不動産市場への投資に関する問い合わせが、最近多くなっている」と、海外の不動産購入を手助けする同サイトの創設者で最高経営責任者(CEO)のHuang Xiaodan氏は言う。
国境を越えての投資は、実際にはまだ実現していない。
「新たな未開拓地域に踏み入るには、その市場を育てるための政策支援と時間が必要だ」と同氏は指摘。「現在、状況を注視しているところだ」
北朝鮮は長年、海外投資家をほぼ締め出してきた。北朝鮮の核兵器開発を抑制しようと昨年、国連が制裁強化して以来、同国の国際的孤立は深まっていた。
だが、北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が3月に北京を電撃訪問し、中朝関係が劇的に改善。また、その翌月には歴史的な南北首脳会談が開催され、今後は米朝首脳会談も控えていることから、一部の日和見主義的な投資家の注目を集めている。
「平壌や元山、新義州の不動産購入に関心のある中国人から問い合わせが数件きている」と、丹東で北朝鮮ツアーを運営する旅行会社「INDPRK」の創設者でグリフィン・チェと呼ばれている人物は語る。
「市場には多くの投機筋がいるが、北朝鮮の不動産を購入できるのは現在、同国民に限られている」
<高騰する国境付近の土地価格>
北朝鮮への主な玄関口となる中国北東部の丹東では、そのような制限はない。不動産会社5社と住民3人の話によると、北朝鮮の経済開放で恩恵を受けるとみられる一部プロジェクトのマンション価格は、3月に金委員長が北京を訪問して以降、50%も跳ね上がった。
「不動産価格の上昇は北朝鮮が原因だ」と、同市のある当局者はロイターに語った。
丹東と北朝鮮の新義州を結ぶ新鴨緑江大橋の開通を見込んで計画された丹東新区は、投資家から最も関心を呼んでいる。この橋は2015年11月開通する予定だったが、現在も延期されたままになっている。
「われわれは皆、橋がまもなく開通すると期待している」と、北朝鮮と取引する中国人貿易商で、丹東の不動産購入を検討しているという Zhao Bin氏は言う。
ソーシャルメディアで目立つ存在であるINDPRKのチェ氏によると、丹東新区の取引価格は1平方メートル当たり約4000元(約7万円)から、同5500─6000元(約9万5000─10万3000円)に上昇。朝鮮半島情勢の改善がその理由だとチェさんはみている。丹東の価格はバブル状態にあり、すでにピークに達した可能性があるとチェさんは警鐘を鳴らす。
「買いたいが、今ではもう遅すぎるだろう」
<価格を押し上げるよそ者>
4月末の週末から労働節の間、購入者の約3分の1は、休みを利用して物件を探しに市外から訪れた人たちだったと、丹東の不動産会社の職員は語る。一方、購入者のほとんどは地元民であり、4月に購入されたという。
地元当局のデータによると、丹東新区を含む振興区では、住宅地の販売価格は先月、前月比で約30%上昇した。4月に計967件のマンション物件が売却されたことを当局のウェブサイトは示している。
中国の不動産協会のデータによれば、丹東では4月の平均住宅価格は前月比1%近く上昇。前年同月比では0.5%の下落だった。ただし、市全体の平均価格は個々のプロジェクトの大きな価格変動を完全に反映しない傾向にある。
マンション購入に伴い登録する人の数が急増して対応しきれないため、事前に予約して登記所を訪れるよう求める声明を丹東の登記所は発表したと、国営紙「証券時報」は伝えている。
電話に出た登記所の女性は、こうした新たな対応の仕方は北朝鮮と関係しないが、いくつかのプロジェクトが最近完成したため、マンション購入者が増加していると語った。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)