焦点:日米FFR、手探りのスタート 追加関税回避へ厳しい舵取り

[東京 8日 ロイター] – 日米両政府が9日にワシントンで開く新たな貿易協議(FFR)では、双方の利益につながる着地点を見いだせるかが焦点となる。自動車への追加関税発動を避けたい日本に対し、米国は保護主義的な姿勢を崩していない。米側が2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を要求する可能性もあり、日本側としては、手探りの交渉の中で最悪の事態を避けるため、厳しい舵取りを迫られる場面もありそうだ。

<ちらつく追加関税>

茂木敏充経済再生担当相は7日の閣議後会見で「ウィンウィン(相互利益)の関係を構築したい」と述べ、初会合を前に意欲を見せた。

日米両国がアジア太平洋地域の経済発展にいかに協力できるかが重要との認識も重ねて示し、米側に建設的な議論を促す構えだ。日本は、環太平洋連携協定(TPP)への早期復帰が米国の利益につながるとの立場をとっており、米側との交渉で譲歩を引き出せるかが課題となる。

ただ、TPP復帰を巡ってライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は「不公正な貿易障壁がある。その1つは牛肉だ」と主張。解決の糸口は見えない。自動車への追加関税発動をちらつかせ、農産品を含めさらなる物品の市場開放を求める展開も予想される。

<日本の対応策>

追加関税発動などの事態を避けるため、日本側が示す妥協案がすんなり受け入れられるかも見通せない。

西村康稔官房副長官は1日、ロイターの取材に対し「日本からの米国工場への投資は非常に多い。LNG購入もこれから数年間で8倍増える見通しだ。防衛装備品も日本の安全保障のため必要なものはしっかり買っていく」と述べた。

複数の政府、与党関係者によると、日本側の対応として、米国産シェールガスの液化設備建設や米産LNG(液化天然ガス)の日本などへの輸出拡大、中国に対抗したアジア・太平洋地域のインフラ支援に関する投資支援などが浮上しているもようだ。

しかし、トランプ大統領の念頭にあるのは「貿易赤字削減のためのディールだけ」(複数の与党・経済官庁幹部)。対応策としては「貿易赤字の最大要因である自動車の現地生産拡大と輸出縮小、米国からの輸入の大幅拡大など手段は限られる」(経済官庁幹部)のが実状だ。

ライトハイザー代表は7月26日、米上院公聴会で日本がFTAに慎重であるのは承知しているとしつつ、「我々としては日本とFTA交渉をしなければならない」と発言している。

日本側にはFTA交渉入りへの懸念も強く、「日本製品が追加関税対象に取り残される最悪の事態」(前出の経済官庁幹部)を回避できるかは予断を許さない。「米国側が何をどこまで求めているのか、出たとこ勝負」(経済官庁幹部)との見方もくすぶる。結果次第では、9月の自民総裁選や来夏の参院選などに影響する可能性も出てくる。

<解決には時間>

甘利明元経済再生相は2日、ロイターとのインタビューで、日米通商交渉は手探りで臨まざるを得ないと指摘。今回の交渉では「お互いどんな状況か探りあう。すぐには解決には至らない」との見方を示した。そのうえで「最終的には日米首脳の間で決まるだろう」と見通している。

9月の自民党総裁選で安倍晋三首相が再選されれば、9月末に米国で開かれる国連総会に際して、トランプ米大統領との首脳会談が行われる見通しだ。

 

(竹本能文 編集:石田仁志)

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