中国、宣伝部門のトップに新人事 王滬寧氏の権限縮小か
中国最高指導部のメンバーで宣伝を担当する王滬寧氏は約1カ月ぶりに公の場に現れた。米中貿易戦で苦境に立たされるなか、国力を過大に宣伝し、世論をミスリードしたとして、王滬寧氏は実権を奪われた可能性が高いと米ラジオ・フリー・アジア(RFA)が22日に報じた。一方、対外宣伝を主に担当する国務院新聞弁公室のトップ人事が発表された。
当局の情報サイト「中国政府網」は21日、ネット情報を管理する国家インターネット情報弁公室(国家網信弁)の徐麟主任(56)を国務院新聞(報道)弁公室主任に充てた人事を発表した。国家網信弁の主任に荘栄文・副主任(57)が昇格した。荘氏は中央宣伝部副部長と国務院新聞弁公室の副主任も兼務する。
両氏はそれぞれ習近平主席が上海市、福建省時代の元部下で、側近と見なされている。政府宣伝部門のトップ人事が刷新されたのは党内外から、米中貿易戦に対する宣伝を批判する声が出ていたためだ。
中国政府系メディアは貿易戦が勃発した当初、トランプ米政権を痛烈に批判し、米に徹底的に抗争していく構えを見せた。「アメリカは貿易戦でしっぺ返しを食らう」「中国は必勝」など強気の見だしが紙面に躍っていた。
しかし、中国はトランプ米政権への対抗策を見いだせず、株式市場と人民元の下落が止まらず、経済は深刻な打撃を受けている。現在、中国メディアは米政権を批判する論調を封印している。
この宣伝を主導する王滬寧氏は今月初めに行われた党の重要な非公式会議・北戴河会議に出席していない。ロイターは9日、中国当局関係者の話を引用し、同会議で王氏が「中国の実力を過剰に誇張し、正しくない宣伝を主導した」と党内から集中砲火を浴びたと報じた。
情報筋もRFAに対して、米中貿易戦が北戴河会議で重要な議題になったと述べた。また、指導部メンバーと長老らがプロパガンダと世論の誘導について議論し、中央宣伝部や網信弁を批判したという。
新華社通信は20日、1カ月ぶりに王滬寧氏の動静を報じた。同氏は北京で、訪中したベトナム共産党中央書記局のチャン・ドク・ルオン常務書記と会見したと伝えた。
その翌日、国営新華社通信電子版に習国家主席の報道方針に関する評論記事が掲載された。RFAは22日、同記事が王滬寧氏の報道・宣伝政策を批判する目的で発表されたと報じた。
中国指導部に近い学者がRFAに対して、中国政府系メディアがこのほど、プロパガンダ工作の強化や「習近平の思想」について繰り返して報道していると話した。同学者は「王滬寧氏が公の場に現れたが、最高指導部の不満を買ってしまった同氏は今後宣伝分野での実権を失い、党務だけを任せられるだろう」と推測した。
RFAは記事で、中国当局の「御用学者」である王滬寧氏が、将来党務のみを担当することになれば、今までの権限が大幅に縮小されるとの見解を示した。
(翻訳編集・張哲)