中国古代の官吏物語

一銭太守

劉寵(りゅうちょう)は後漢の時の東莱郡牟平(とうらいぐんむへい・現在の山東省)出身の人。漢の桓帝(かんてい)の時、彼は会稽郡(かいけんぐん)の太守を担当し、在任中、煩雑な政令や刑罰の法を簡略化し、厳格に法律に基づいて物事を進めました。そのため、社会の秩序は整然となり、庶民も豊かな暮らしを楽しむことができました。

その後、劉寵が京都に転任した時、数人の年配者が100銭を持って彼を見送りに来ました。年配者は真心を込めて、「私たちは田舎で暮らしていますが、初めて郡に来ました。以前の郡守は庶民から財産を取り上げることばかりして、庶民は安心して暮らすことができませんでした。あなたが就任して以来、社会は安定し、冤罪(えんざい)もなくなりました。私たちはこの歳であなたのような賢明な郡の長に出会えて、本当に幸運です! あなたが昇格されたと聞いて、見送りに来ました」と言いました。劉寵は餞別(せんべつ)をかたく断りましたが、年配者たちはどうしても贈りたいと言うので、結局、劉寵は一人から一銭を受け取りました。その後、人々は彼のことを「一銭太守」と呼ぶようになりました。