4月28日、中国共産党政府に近い香港当局による、法治の危機を訴える香港住民や海外在住者が、パレードを行った (Poon Zoi-Syu/Epoch Times)

香港の容疑者引き渡し改正案、中央政府「強制突破」と指示=情報筋

米政府機関「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」は5月15日、香港特別行政区政府が改正を進めている『容疑者の中国への引き渡し』条例について公聴会を開いた。香港から民主派の代表的人物・李柱銘弁護士らが出席した。

CECCの共同委員長マルコ・ルビオ議員(共和党)は公聴会で、「香港の自治が明らかに攻撃されている時に、米国は香港に対する歴史的なコミットメントを新たにするべきだ」と「香港の民主と人権に関する法案」を近く連邦議会に提出する意向を示した。

公聴会に出席した、李卓人・九龍西補選候選人工党副主席職工盟秘書長は、「香港の人々は、中国本土を訪問して働くとき、悪名高い中国の司法制度に直面している。中国共産党は人を『捕虜』にすることもあり、逮捕起訴され、テレビ放映で自白を強要される例は、よく知られている」と語った。

李柱銘弁護士は「改正案が成立すれば、香港は今までの香港ではなくなる」と危機感をあらわにした。

同委員会が同日に発表した文書には、「香港の自治権とその保証された自由は、中国政府からの干渉を増加させ、侵食されるという重大な懸念がある」としている。例として、海外ジャーナリストの入港ビザ発行禁止、結党の規制、2014年の民主化運動・雨傘運動を主導した若者に有罪判決を下したことなどを挙げた。

香港では4月末、容疑者引き渡し条例改正に反対する大規模な市民デモが発生した。主催した民主派団体・民間人権陣線(Civil Human Rights Front,CHRF)の発表によると、参加者は13万人に達し、3月末の前回デモの1万2千人を大きく上回った。

条例改正の発端は昨年2月に台湾で起きた殺人事件だった。香港人の男が台湾で交際相手の女性を殺害後、香港に戻り台湾当局の訴追を免れた。香港は20の国と容疑者引き渡し協定を結んでいるが、台湾や中国との間に協定はない。このため香港政府は「法の穴をふさがなければならない。香港を逃亡犯の天国にしない」と条例改正に乗り出した。 

同法が改正されれば、香港市民のほか、香港を訪れる外国人、ビジネスマン、観光客も本土に引渡される可能性がある。

一方で、台湾当局は、香港にいる台湾人のリスクを考え、改正案に強く反対しており、もし改正案が可決されても、殺人犯としてこの男の引き渡しを求めない方針を示している。

林鄭月娥香港長官は7月までの法改正を目指している。5月11日、香港立法府(議会)では同法案をめぐり親中派議員と民主派議員とがもみ合いになり、一人が病院に搬送された。

逃亡犯条約改正「中国中央政府の指示」

中国中央政府の香港出先機関にあたる中央人民政府駐香港特別行政区連絡弁公室(中連弁)に近い情報筋が大紀元に伝えたところによると、今回の法改正は中央政府からの指示だという。市民の強い反発があっても「強行突破せよ」と林鄭長官に命じたという。

その目的について、情報筋は「香港の筋金入りの反共勢力を追い出すこと」「民主派がソフト路線に転じるよう迫っている」ためだとしている。アメリカの対中政策が変わったことが背景にあるという。

中南海に近い別の情報筋も大紀元に対して、香港が「反共産党の拠点」になることを懸念して、中央政府は条例の改正を急いでいると語った。香港と本土をつなぐ広深港高速鉄道の開通で、市民の往来が盛んになった。毎年、香港で天安門事件記念集会、法輪功の迫害中止を呼びかけるデモが盛んに行われており、大陸市民が香港の自由に衝撃を受けている。

中国共産党政権を批判する書籍を販売したとして中国当局に拘束され、その後釈放された香港「銅鑼湾(どらわん)書店」の元店長・林栄基氏は先月26日、台湾に移住した。「逃亡犯条例」が香港の立法会(議会)で成立すれば、中国に送還される恐れがある。

米諮問機関、「米利益がリスクに直面」

 米議会の米中経済安全保障調査委員会(USCC)は8日付の報告書で、今回の事態を重く見ており「香港での米国の安全保障・経済面での権益が深刻なリスクに直面している、と懸念を示している。また、改正案が成立すれば、1992年に通過した《米-香港政策法》(U.S.-Hong Kong Policy Act of 1992)に抵触する恐れがあるとした。

《米-香港政策法》で、すでに米国と香港との間の容疑者引き渡しについて規定している。報告書は、北京政府からの圧力で香港政府は「無実の罪で」香港滞在中のアメリカ人を中国本土に引き渡す恐れがあると指摘した。最近、中国でカナダ人が相次ぎ拘束されたことに触れ、「アメリカ人が危険に晒されている」

艦船への補給や乗組員の休養などの目的で、香港に寄港する多くの米海軍艦艇の乗組員も被害を受ける可能性があるとして、寄港先の変更の可能性にも言及した。

また、改正案が成立すれば、香港の「安全な投資先」としての評判が損なわれると言及した。現在、香港で約8万5千のアメリカ人が滞在しており、1300社超の米企業が経営活動を行っている。

(翻訳編集・佐渡道世)

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