尭(ぎょう)、舜(しゅん)、禹(う)は古代中国の著名な三皇帝です。彼らは皆極めて高い道徳基準で身を律っしていたため、四方から推薦されて帝位にまで上がった人物でした。その中の、舜は「孝に極まる」ことによって天地を感動させ、尭帝に後継者として選ばれました。そして、舜の話は歴代の孝行物語の一番としても挙げられ、語り継がれています。
舜が即位した後の国号は虞(ぐ)です。そのため、彼は歴史上では「虞舜(ぐしゅん)」とも称されました。
虞舜の姓は姚で、名を重華と言います。父親の瞽叟(こそう)は道理をわきまえない頑固な人で、舜に対する接し方もかなり良くありませんでした。舜の母親の「握登」は才徳兼備(さいとくけんび・すぐれた才能と知恵、人徳を兼ね備えていること)な人でしたが、残念なことに舜が幼い頃、不幸にも逝去しました。その後、父親は再婚して継母を迎えましたが、この継母は婦徳のない人でした。弟の「象(しよう)」が生まれてからは、父親は継母と弟を偏愛するだけではなく、彼ら3人はいつも一緒に舜をいじめ、舜を殺そうと何度も企みました。このような状況の中で、舜は相変わらず両親に孝行を尽くし、兄弟と仲良く付き合い、全力を尽くして家庭を睦まじくさせるように努力し、彼らと一家団欒の楽しみを分かち合いました。その過程で様々な艱難辛苦(かんなんしんく・非常な困難にあって苦しみ悩むこと)がありましたが、しかし、舜は生涯をかけてこの目的に向けて弛(たゆ)まず努力しました。
そして小さい時から舜は両親に責められると、まず「きっと、僕のどこかが悪かった。だから、両親を怒らせた」と心の中で考えました。そこで、彼は自分の言動に細心の注意を払い、反省し、方法を考えて両親を喜ばせるようにしました。弟から理不尽なことをされても舜は怒るどころか、かえって自分が良い手本になってあげられなかったから、弟にこのような徳が足りない行為をさせてしまったと深く自責しました。時には、彼は畑に走り出し大声を上げて泣き、「どうして完璧に行えないのか、どうして両親を喜ばせることができないのか」と自問しました。人々は年端も行かない彼がここまで物事をわきまえ、ここまで孝行するのを見て、皆深く心を打たれました。
伝えられたところによると、舜の親孝行の心は郷里の人々を感動させただけではなく、天地万物まで感動させました。彼は歴山という所で耕作をしていましたが、そこの山石や草木、そして、鳥や動物たちともとても仲良く付き合って、動物たちはよく手伝いに来たそうです。おとなしくて優しい象が畑にやって来て、耕すことを手伝い、可愛らしい小鳥たちは群れを作ってさえずりながら、除草することを手伝ってくれました。徳行の力の凄さを目の当たりにした人々は皆驚き、敬服しました。しかし、舜は依然として謙虚で、従順でした。
時間が経過すると、舜の親を大切にする行為はますます多くの人から称賛され、伝えられ、舜は最高の孝子者としてたちまち全国各地に知れ渡りました。
尭帝が86歳の時、自分はもう高齢だから後継者を探して帝位を受け継がせたいと望みました。大臣たちに意見を求めると、各大臣は口をそろえて舜を推薦しました。その理由はほかでもなく、舜が有名な孝行者だったからです。ここから私たちの祖先が君主を選ぶ時、孝行を一番大切な品格として考えたことが分かります。彼らから見れば、親孝行をする人は必ず天下の民衆をも大切にしてくれるだろうと考えていたからです。
しかし、舜は王位を受け継いだ後、決してあまり喜びを感じず、かえって「私はここまでやり遂げても、両親は依然と私の事を好きにならない。このような私が天子になり、帝王になっても、何の意味があるのでしょうか?」と寂しく言ったそうです。周囲の人々は彼の徳を極める孝行に心を打たれ、涙を流しました。
しかし、「天は自ら助くる者を助く」と言われるように、舜の孝行する真心はついに両親と弟を感化しました。
孝行をするのは難しくないのですが、しかし、両親が自分に対してひどい仕打ちをし、よくない時でも孝行をやり遂げることはとても難しいことです。それでも孝行を堅持し、その上、両親の意地悪な行為の前でも自らを反省し、自らの問題を探し出すことはもっと難しいことです。舜の孝行は「極まる孝行」、「大いなる孝行」と称賛されたのも、この理由ではないでしょうか。
孟子とその弟子たちが作った書物『孟子』の中には、「舜何人也?予何人也?有为者,亦若是!」という文言があります。つまり、「あの舜が親孝行できたのだから、私達にもできるはずだ」という意味の言葉が書かれています。
考えて見てください。もし私達の誰もが舜のように、本当に親に恭(うやうや)しく仕えることができれば、そして、その「孝行」をさらに周りの人、事、物に広げることができれば、そうなれば、それぞれの家庭は幸せで円満になるだけではなく、社会全体も調和し、友愛に満ちたものになるのではないでしょうか。
(明慧ネットより転載)
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