ホーチミンのバナナ売り(左)(大紀元)
【ショート・エッセイ】

アオザイと微笑みの国へ

ホーチミン市となった今は、もちろん平和な町になった。最近そこへ行ってきた知人の話によると、道路にはバイクや自転車があふれ、活気に満ちていたという。

 それでもサイゴンという旧名が、今も頭から抜けないでいる。政治的な意味ではもちろんない。世界地図を眺めるのが好きだった小学生の頃から「ベトナムは南北に分かれていた」という地図上の印象と、ニュース速報で飛び込んできた「サイゴン陥落」の強烈な記憶が、数十年を経た今も残っているからなのだ。

 ミュージカル「ミス・サイゴン」のクライマックスでは、凄まじい爆音とともにステージ上にヘリコプターが降下してくる。サイゴンに最後まで残っていた米国人をあわてて飲み込んだヘリコプターは、手に証明書を持ち、金網ごしに助けを求めて叫ぶ群集を見捨てて、逃げるように飛び去るのである。

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