優れる宝 子にしかめやも
万葉の歌人・山上憶良(やまのうえのおくら)は、官人としては地方官どまりで特に出世したわけではない。ただ憶良という人物がもつ温かみに、後世の私たちは大きな魅力を感じているようだ
アオザイと微笑みの国へ
ホーチミン市となった今は、もちろん平和な町になった。最近そこへ行ってきた知人の話によると、道路にはバイクや自転車があふれ、活気に満ちていたという。
泥より出づる芙蓉のように
我が国最初の勅撰集である『古今和歌集』に、蓮を詠んだ一首「蓮葉(はちすば)のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく」がある。
光源氏と夏のバラ
【大紀元日本7月10日】バラの花は、明治以降に日本に入ってきた西洋の花であると、長らく誤解していた。確かに今日の観賞用のバラの多くは、西洋世界の圧倒的な嗜好のなかで品種改良され、作り出されたものであ
【ショート・エッセイ】漱石と天麩羅そば
故・司馬遼太郎さんのエッセイ『街道をゆく・閩のみち』の中に、夏目漱石の小説『坊ちゃん』についての、おもしろい指摘がある。
【ショート・エッセイ】天上から仙人が見下ろす国
仙人掌、仙人球、仙人鞭。中国語の辞書をめくっていて、たまたま目に留まった。どうやら、その形状で分類したサボテンの名称であるらしい。前から順にウチワサボテン、玉サボテン、柱サボテンだという。
【ショート・エッセイ】 語り継ぎ、聞き継ぐこと
【大紀元日本5月14日】大正12年というと88年前になる。その9月1日の正午に近い頃、関東地方南部を巨大地震が襲った。地震による建物倒壊のほか、昼食時であったことが災いして、市街地の百数十カ所から出
【ショート・エッセイ】 みかんの花咲く国
【大紀元日本5月3日】童謡「みかんの花咲く丘」に歌われた、のびやかな風景が好きだ。 みかんと言えばコタツの上に置かれた冬の風物詩のようだが、消費者が冬に味わうために、農家は前年から丹精込めてそれを育
【ショート・エッセイ】 茶のみ話で「茶の話」
【大紀元日本4月16日】常飲しているのは熱湯を注ぎ込む安価な番茶ばかりだが、なかなか気に入っている。 もとより茶道の作法にも思想にも無知であるため、それを語る資格は持たない。ただ茶道が、多くの先人に
【ショート・エッセイ】 アルハンブラの奇跡
【大紀元日本3月27日】ギターが「世界楽器」である以上に、スペインの著名なギタリストであるタレガ(1852~1909)が作曲した「アルハンブラの思い出」は、世界中で愛されている楽曲の一つであろう。
【ショート・エッセイ】家庭人としての小説家
【大紀元日本2月27日】『白い花が好きだ』と題されたエッセイ集が、その小説家にある。古本屋で見かけ、題名が気に入ったという、それだけの理由で購入したものが30年経った今も筆者の書架に並んでいる。 『
【ショート・エッセイ】 子規門下の二人
【大紀元日本2月13日】 赤い椿 白い椿と落ちにけり 碧梧桐 河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)が正岡子規の最期をみとったのは明治35年(1902年)であった。正確に言えば、子規の他の門人たちと
【ショート・エッセイ】 「とんぼ玉」の世界史
【大紀元日本1月30日】とんぼ玉とは、人工的に作られた美しいガラス玉のことである。 多くは球形で、糸や紐を通す穴が開けられている。世界各国の用例を見ると、たくさんの玉を連結して首飾りのようにする場合
【ショート・エッセイ】 空を見よう 星を仰ごう
【大紀元日本12月26日】大宇宙のなかに、地球という砂粒のように小さい星が浮かんでおり、その粒の表面の小さな島に私たちは乗っている。 7年の歳月をかけて60億キロの長旅を終え、大気圏突入で燃え尽きた
【ショート・エッセイ】 一葉の描く師走「大つごもり」
【大紀元日本12月12日】昔、貧家の年越しは大変だったらしい。一年最後の大つごもり(大晦日)には、その年の借金を返さねばならないからだ。 樋口一葉の短編「大つごもり」は、そのような特別な日を前にして
【ショート・エッセイ】 「秋菊の物語」から18年後の今
【大紀元日本11月28日】張芸謀(チャン・イーモウ)監督による中国映画「秋菊の物語(原題、秋菊打官司)」が作られたのは92年。この作品は、同年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、主演の鞏俐(コン・リ
【ショート・エッセイ】 西の国 東の国
【大紀元日本11月14日】根拠のない推測にすぎないが、国家には、その運営上ちょうど良い大きさというものがあるのではないかと思っている。 国が大きすぎれば統治が難しく、いろいろ厄介なことも多い。小さい
【ショート・エッセイ】 なめとこ山の熊たち
【大紀元日本11月7日】「熊。おれはてまえを憎くて殺したのでねえんだぞ。おれも商売ならてめえも射たなけぁならねえ。ほかの罪のねえ仕事していんだが畑はなし木はお上のものにきまったし里へ出ても誰も相手に
【ショート・エッセイ】 小説から飛び出した主人公
【大紀元日本10月24日】歴史作家が「小説中の人」として描いた人物が広く読者に受け入れられ、いつしかそれが実像のように先行して動き出すという例は、これまでにもいくつかあった。 坂本龍馬へのブーム的人
【ショート・エッセイ】孝女・木蘭の物語
【大紀元日本9月12日】民間の伝承であるから、史実と照合させて当否を論じる必要はない。ただ、漢民族の伝統的な「好み」に対して、私たち日本人もいくらかの理解と共感を表したいと思うのだ。 木蘭(ムーラン
【ショート・エッセイ】「夏の花」のあとに
【大紀元日本8月29日】 悲しむべきことではあるが、日本の近代文学のなかに原爆文学という他国の文学にはない特異なジャンルがある。 その代表的な作品は、映画化もされた井伏鱒二の「黒い雨」であろう。原題