11月5日に予定されていた中国金融会社、アント・グループの上海・香港両市場の上場を延期した(AFP via Getty Images)

中国当局、アント・グループの首脳と馬雲氏を聴取 上海・香港上場が延期に

中国金融規制当局は11月2日、香港と上海の株式市場で新規株式公開(IPO)を控えているアリババグループ傘下の金融会社、アント・グループの上級幹部と、同社の経営権を実質的に保有する馬雲氏を呼び出し、監督管理上の指導を行ったことがわかった。これを受けて、同社の両市場の上場は延期された。

中国証券監督管理委員会が2日発表した声明によると、中国人民銀行(中央銀行)、銀行保険監督管理委員会、国家外匯管理局が、馬雲氏とアント・グループの井賢棟会長、胡暁明社長に対して、「監督管理上の聴取」を行ったとした。

当局は、聴取を行った理由を明らかにしなかった。しかし、馬氏がこのほど、公の場で中国の金融規制システムを非難したことが原因ではないかと憶測が広がっている。

10月24日、上海で「第2回外灘(バンド)金融サミット」が開催され、王岐山国家副主席はビデオメッセージを寄せた。

王氏は「近年、新しい金融技術が普及して、新ビジネス形態が現れていることで、効率性や利便性が高まった一方で、金融リスクも拡大している」と警鐘を鳴らした。また、同氏は、「金融リスクを防ぎ、回避し続けなればならない」「秩序を持って正しくリスクに対処する」「絶対にシステミック・リスクを発生させてはいけない」などと強調した。

一方、馬氏も同サミットでスピーチを行った際、「中国の金融(市場)には、いわゆる『システミック・リスク』などそもそも存在しない。むしろ『健全的な金融システムが欠如している』というリスクに直面している」と述べた。馬氏は、中国当局がリスクをゼロに抑えようとする試みこそ、「最大のリスクだ」と批判した。

馬氏はさらに、「煩雑で厄介な規制が多すぎるのに、(良い)政策は少なすぎる。それが技術革新を阻んでいる」と指摘した。

馬氏の発言は、当局の金融規制措置や王岐山氏への反発とみられた。中国財政部(財務省)の鄒加怡(すう・かい)副部長、全国人民政治協商会議経済委員会の尚福林主任を含む高官らと、中国官製メディアの「証券時報」などは馬氏に対して、痛烈な批判を展開した。

アント・グループは10月26日の発表で、同社は11月5日に上海と香港の両証券取引所で、IPOを予定し、過去最高の2300億元(約3兆6000億円)の資金を調達する見込みだった。

しかし、中国当局が馬氏らを聴取したことを受けて、上海証券取引所は3日夜、アント・グループのIPOを延期すると声明を発表した。取引所側は「金融技術監督管理の環境に変化が生じた」ため、「上場の条件や情報開示の基準に符合しなくなった」

その後、アント・グループは香港証券取引所で通知を公表し、香港市場での上場を遅らせると発表した。

(大紀元日本ウェブ編集部)

 

関連記事
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
オーストラリアのピーター・ダットン国防相は22日、宇宙司令部の設立を発表し、「強硬で好戦的な中露両国」に対抗できる宇宙軍事能力が必要だと述べた。
中国メディアは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、反米・反北大西洋条約機構(反NATO)などの親ロシア政権の宣伝工作(プロパガンダ)を積極的に推進している。
ロシアのウクライナ侵攻に対して世界の有力国が一致団結してロシアに壊滅的な経済制裁を加える中、米国はロシア支援を続ける中国企業への制裁も視野に入れ、中露の枢軸を断ち切ろうとしている。
欧米の経済制裁はロシアを中国共産党に接近させ、権威主義の枢軸は中国とロシアの勢力圏にある他の国々に拡大する可能性がある。