古典の味わい

【古典の味わい】景公之馬(景公の馬) 『説苑』より

 景公有馬、其圉人殺之。景公怒、援戈将自撃之。晏子曰「此不知其罪而死。臣請為君数之、令知其罪而殺之」。公曰「諾」。晏子挙戈而臨之曰「汝為吾君養馬而殺之。汝罪当死。汝使吾君以馬之故殺圉人。汝罪又当死。汝使吾君以馬故殺人、聞於四鄰諸侯。汝罪又当死」。公曰「夫子釈之、夫子釈之。勿傷我仁也」。

 春秋時代、斉(せい)の景公(けいこう)は、お気に入りの馬をもっていたが、馬飼いの男が誤ってその馬を死なせてしまった。景公は怒り、まさに自ら戈(ほこ)をとって馬飼いの男を打ち殺そうとした。これを見て(斉の宰相である)晏子(あんし)が言った。「そうしますと、この男は、馬を死なせた自身の行為が死罪にあたることを知らずに死ぬことになります。私は、上さまに代わってこの男に教え諭し、罪の重さをよく知らしめた上で死刑に処そうと思いますが、いかがでしょうか」。景公は「よし、そうせよ」と答えた。

 そこで晏子は、戈を振り上げ、馬飼いに向かって言った。「おまえは、上さまの大切な馬を養い育てていながら、それを死なせてしまった。おまえの罪は死罪に値する」。「また、おまえのしたことによって、上さまは、馬一頭のために人を殺すはめになった。おまえの罪は死罪に値する」。「そればかりか、おまえのしたことは、斉の君主がたかが馬一頭のために人を死罪にした、という不名誉を近隣の国に知らしめることにもなった。おまえの罪は、まさに死罪に値するのだ」。

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