婿の牛を奪ったのは誰?
隋の時代、元城県に住む男性は出稼ぎに行く前に、自分が飼っていた雌牛を嫁の母親に預けた。数年後、故郷に戻った男性は雌牛を返してもらうために義母の家を訪ねた。すると、雌牛は何頭もの子牛を出産し、子牛たちは元気いっぱいに成長していた。
しかし、義母は婿の話に応じず、雌牛を預かったことを否定した。子牛は全て自分が飼っている老いた雌牛が生んだ、老いた雌牛は自分で買ったのだとの一点張りだった。
腹を立てた男性は、元城県の県令に訴えた。だが、男性には証拠がなく、県令に叱りつけられ、訴えは却下された。
行き詰まった男性は、ついに隣県の武陽県庁に駆け込んだ。県令の張允濟(ちょう・うんさい)は「そちらには県令がいるでしょう。貴方の件は、私の権限外のことです」と断った。
男性は跪き、繰り返し頭を地につけて問題を解決してくれるよう懇願した。男性は、自分は牛を失った上、今やでっちあげだと濡れ衣まで着せられ、今後どう生きていけばよいのかと号泣した。
張允濟はため息をつき、仕方なく「やってみましょう」と告げた。 張允濟は小役人に彼を縛りあげさせ、布で顔を覆い、彼の義理の母宅へ連れて行った。張允濟は、「こいつは武陽県で捕まった泥棒だ。彼が盗んだ牛を全部お宅に運んだと白状した。我々は盗品を捜査しに来た 」と彼の義母に告げた。義母は驚きのあまり、とっさに弁明した。「それは冤罪です!ここにいる牛は全部婿から預かったものばかりです。盗品なんて冗談じゃありません」
張允濟は言った。「では、盗品であることが確認されたら、どうなりますか」
「もちろん、罪がさらに重くなります」と義母は答えた。
張允濟は男性の頭に被せてあった布を外した。「では、ここにいるあなたの婿に牛を返しなさい」。彼女はその場で自分の嘘を認め、婿に謝罪した。
( 翻訳編集・潤)