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グルテンじゃなかった? “フルクタン”が胃腸不調の原因かも

グルテンが原因で胃腸の不快感が起きると思い、ずっと摂取を避けているのに、それでもお腹の張りや不調が続いている…。そんな場合、実は「フルクタン」が関係しているかもしれません。

小麦にはグルテン以外にも、胃腸に影響を与えるさまざまな成分が含まれています。そのひとつが「フルクタン」と呼ばれる天然の炭水化物で、多くの植物に広く含まれています。

多くの胃腸に不調を抱える人は、グルテンフリーの食事を始めると体調が改善したと感じますが、それは実際にはフルクタンの摂取量が減ったことによる可能性があります。近年の研究では、グルテンに対する過剰な反応の多くが、実はフルクタンに対してである可能性が指摘されています。

 

グルテンに関する問題が増加傾向に――その背景とは

グルテンに対する過剰な反応が起こる原因はさまざまで、多くは研究によって明らかにされていますが、いまだに正体がはっきりしない「非セリアック性グルテン過敏症」や「小麦過敏症」などの症状については、十分に解明されていません。これらの状態を診断するための明確な検査法はなく、発症の仕組みもはっきりしていないうえ、セリアック病など他の疾患と症状が重なるため、診断が難しくなっています。

グルテンを避ける最大の理由のひとつが「セリアック病」です。これは自己免疫疾患の一種で、グルテンの摂取によって小腸が損傷し、栄養の吸収が妨げられ、長期的な慢性的消化不良などの症状を引き起こします。

一方、「小麦アレルギー」は免疫系が小麦に対してIgE抗体を作り、化学物質を放出して、鼻や喉、肺、皮膚にアレルギー反応を引き起こすものです。

機能性医学の専門医であり、医師・栄養士でもあるエリザベス・ボハム医師は、The Epoch Times の電子メール取材に対し、「グルテン過敏は腸と免疫系の両方に影響を及ぼす可能性がある」と述べています。その症状には、疲労感、湿疹、皮膚のかゆみ、脳のもやもや(ブレインフォグ)、関節痛、頭痛、腹部膨満感、下痢、便秘、腹痛などが含まれます。

一方で、フルクタン不耐症による小麦への反応は免疫系によって引き起こされるものではなく、あくまで胃腸の症状にとどまります。

フルクタン不耐症は、腸内環境の乱れ、特に炭水化物を分解する腸内細菌が不足していることにより発生します。このため、食物繊維が腸内で発酵し、腹部膨満感や腹痛を引き起こし、下痢や便秘といった腸の動きの異常をもたらすのです。

 

フルクタンの複雑な特性

フルクタンは、FODMAP(発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類およびポリオール)の一種に分類されます。これらはすべて、小腸での吸収が難しい短鎖の炭水化物です。他のFODMAPの多くは、単一の分子構造を持っています。たとえば、山梨糖やマンニトールなどの糖アルコールや、果糖や乳糖のような単糖類がそれにあたります。

一方、フルクタンは、複数の果糖分子が鎖のようにつながり、その末端にグルコース(ブドウ糖)がついた構造をしています。フルクタンは、その長さや構造が一定ではなく多様であるため、正確に測定するのが非常に難しいとされています。

FODMAPは、さまざまな食品の中に含まれていますが、中でもフルクタンは、他のFODMAPと比べてより幅広い食品カテゴリーに存在しています。穀物、果物、野菜など、私たちが日常的に摂取する多くの食品に含まれているため、フルクタンを完全に食事から取り除くのは容易ではありません。

グルテンとフルクタンの両方を含む食品としては、小麦、大麦、ライ麦、スペルト小麦などが挙げられます。

また、グルテンは含まれていないものの、フルクタンが多く含まれる食品も多く存在します。たとえば、バナナ、ナツメ、西瓜といった果物、ひよこ豆、黒豆、金時豆などの豆類、ビーツ、芽キャベツ、エシャロット、チコリの根、リーキ(ポロねぎ)といった野菜類、さらにアーモンド、カシューナッツ、ピスタチオといったナッツ類もその一部です。

 

真の原因はフルクタンだった――グルテンではなかった可能性

非セリアック性グルテン過敏症や小麦過敏と診断された患者たちを対象に、研究者たちはある仮説を検証しました。それは、症状の本当の原因はグルテンではなく「フルクタン」かもしれないという仮説を立てました。

2024年に医学誌『BMC Medicine』で発表された研究では、グルテン入りのエネルギーバーを食べた場合よりも、フルクタン入りのエネルギーバーを食べたときのほうが、被験者がより多くの胃腸症状を報告する傾向にあることが示されました。ただし、研究者たちはその症状を引き起こす正確な仕組みを突き止めることはできませんでした。

研究では、参加者の食生活の変化の前後で便中の腸内細菌叢を調べましたが、フルクタンが多くの問題を引き起こす理由を説明できるような顕著な細菌の変化は見られませんでした。ただし、参加者59人のうちに見られた明らかな傾向として、個人の腸内細菌構成の違いが、胃腸症状に影響を及ぼしていたことが確認されました。

研究では、参加者をグルテン、フルクタン、プラセボ(偽薬)をそれぞれ含んだシリアルバーの3グループに無作為に割り当て、7日間の摂取を行いました。その後、7日以上の休養期間を置き、順次ほかのグループの摂取に切り替えるというクロスオーバー方式で全ての条件を試していきました。

参加者は、過敏性腸症候群の評価尺度を用いて自身の症状を記録しました。結果として、13人が「グルテン」で最も強い症状を感じたと回答し、24人は「フルクタン」、22人は「プラセボ」と答えました。

この研究結果は、栄養士が現場でよく直面する「誤解」を浮き彫りにしています。アシュリー・オスワルド氏(オスワルド消化器クリニックの栄養士・代表)は、The Epoch Times の取材に対し次のように語っています。「人々は、グルテンが原因だと思い込みがちです。専門の腸内環境に詳しい栄養士や研究者に相談する機会がなければ、その思い込みがずっと続いてしまうことも少なくありません。」

フルクタンによる胃腸症状は、改善までに数日から数週間かかることが多く、グルテンによる場合は改善までに最大で21日かかることもあります。

 

最も効果的な方法――食事除去法で原因を見極める

食事除去法は、食物に対する過敏反応を見極めるための「ゴールドスタンダード(最も信頼できる基準)」とされています。特に、グルテンやFODMAP(発酵性の短鎖炭水化物)に関連する問題を探る際に有効です。

小麦やグルテンに対するアレルギー検査は存在しますが、これらは「過敏性」を示すものではないため、すべてのケースに当てはまるわけではありません。その一方で、食事除去法では、小腸内での細菌の過剰増殖や、腸内細菌バランスの乱れを調べることができ、これが高FODMAP食品に対する反応の原因になることもあります。

ただし、こうした検査が常に信頼できるとは限らないと、機能性医学医であり栄養士でもあるエリザベス・ボハム氏は指摘しています。

「私たちはまず、一定期間の低FODMAP食を試し、腹部の張りや痛み、下痢、便秘といった症状が改善できるかを観察します。もし効果が見られたら、徐々に高FODMAPの食品を再導入していきます」とボハム氏は説明します。

この食事除去法は、通常2〜6週間かけて実施され、再導入の段階では、専門家と連携して症状を慎重に観察することが望ましいとされています。

低FODMAP食は、オーストラリアのモナシュ大学によって開発され、その大学が提供する専用アプリでは、除去と再導入の過程をガイドしてくれる機能が搭載されています。

栄養士であり、オスワルド消化器クリニックの代表でもあるアシュリー・オスワルド氏は、多くの人が自分の症状の真の原因を深く掘り下げようとせず、「グルテンをやめたら調子がよくなったから、それが原因だろう」と思い込んでしまう傾向があると指摘しています。

また、グルテンかフルクタンかに関係なく、どれだけの量の小麦やパンを食べていたか、または炭水化物の代替としてどんな食品を取り入れたかといった他の要因も、症状に影響を与える事もあります。血糖バランスの乱れが起これば、それが炎症を引き起こし、グルテンやフルクタンによる反応と似た症状が現れることもあるのです。

「グルテン過敏症とフルクタン不耐症が同時に存在するケースも珍しくありません」とオスワルド氏は述べ、「この場合も基本的なアプローチは同じで、疑わしい食品を一旦除去し、症状の変化を観察します」と説明しています。

不要な食事制限は、かえって腸内の回復を妨げることがあります。ボハム氏によれば、もしフルクタンが問題であっても、一定期間の除去と再導入を経ることで、最終的にはフルクタンを含む高繊維食品の恩恵を受けられるようになる可能性があるとのことです。これらの食品は、バランスの取れた食生活に欠かせない存在です。

「必要な炭水化物は、さつまいもなどのでんぷん質の野菜や、キヌアやお米といったグルテンフリーの穀類からしっかり摂ることができます」と彼女は述べ、「グルテンを避けること自体が、長期的に健康に悪影響を与えるわけではありません」と補足しています。さらに、高FODMAP食品は腸内細菌のエサとなる“プレバイオティクス”であり、これらの繊維が腸内の善玉菌を育てる栄養源となることも、見逃せないポイントです。

(翻訳 華山律)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。