会見に臨む出澤剛社長(中)、舛田淳取締役(右)、池邉智洋上級執行役員(左)(LINE提供)

LINE社長ら会見「信頼裏切った」と陳謝 中国からのアクセスの影響は政府委員会に報告

23日、通信アプリ大手LINE出澤剛社長ら役員3名は都内とオンライン形式で記者会見を行い、ユーザーへの説明などが不十分なまま、中国韓国などでデータ管理やシステム開発をしていた問題で「信頼を損ねた」として謝罪と説明を行った。会見では、中国からのアクセスは遮断済みで、今まで国外で保管されていたデータを段階的に日本国内に移転すると発表した。

LINEは、銀行口座や健康保険証のデータ、電子決済の取引情報を韓国の元親会社「NAVER」のサーバに保管し、韓国のLINEの子会社の社員がアクセスできる状態にしていた。また、朝日新聞の報道によれば、LINEが中国上海に構える関連会社に所属する中国人技術者4人が、日本国内に個人情報が含まれるデータベースに計32回、アクセスしていたという。

日本国内だけで8600万人以上のアクティブユーザーを抱える大手アプリに対する個人情報の取り扱い姿勢が疑問視され、波紋が広がっている。問題を受けて、総務省や防衛省、一部地方自治体はLINEとの提携サービスの停止を発表している。

出澤社長によれば、ユーザー情報の海外での取り扱いについては、2月、ポータルサイト大手「Yahoo!」などを運営するZホールディングス(以下、ZHD)との経営統合に際し、ZHDからLINEへの指摘で表面化した。

3月19日、ZHDとLINEは、今回の個人情報の取り扱いに関する対応として、外部有識者による検証特別委員会「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」の設置を発表している。

会見の最初、出澤社長は「ご迷惑とご心配をおかけしており、心からお詫び申し上げる」と頭を深々と下げた。そして「非常に多くのユーザーからの信頼を裏切ることとなってしまったことを深く受け止めている」と述べた。

LINEは対応策として、中国からのアクセス遮断や中国での業務終了、プライバシーポリシーの改訂、ガバナンス体制の強化などを挙げた。出澤社長は、中国からのアクセス遮断については済んでいるが、ほかの項目は順次行っていく予定であるとした。また、中国からアクセスがあった件について、出澤社長は「委員会で審査中」として、この影響に関する詳細な説明は避けた。

記者会見での出澤剛社長(LINE提供)

政府の個人情報保護委員会は23日、LINE利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能だった問題などを受け、さらなる実態調査を行っており、LINEに調査報告を提出するよう要請している。

また、オンライン決済の「LINE Pay」については、現在、韓国のデータセンターで管理している取引情報を今年9月までに国内のデータセンターに移転するという。報道によれば、LINE Payサービスは、利用者の出入金や決済データに加えて、加盟店の銀行口座番号なども、ユーザーの十分な承認や説明もなく韓国に保管していた。

今回の事件でユーザー数に変動はあるかとの質問に対し、出澤社長は、ユーザー数は大きな変化はないとした。公式アカウントについては、政府機関や地方自治体が利用停止したが、「企業等については大きな動きはない」と述べた。

中国はサイバーセキュリティ法により、国内海外企業に関わらず、中国共産党当局に協力を求められれば、すべての企業に情報提供義務がある。この認識について問われると、出澤社長は「中国の国家情報法への懸念など、日本の利用者に配慮が足りなかった」と述べた。

なぜ画像データなどを保管するデータセンターを韓国に置いたのか。「画像と動画は大きいデータで、LINEのサービスは速さが大事。日本のユーザーに限定しているなら日本でいいが、ユーザーは台湾、タイ、インドネシア、ロシア、中東など、多くの国にいる。遅延が少なく、高いセキュリティレベルのサーバー体制、そして人材がいるということを考慮すれば、NAVERの子会社だったLINEにとって韓国がリーズナブルだった。コストはかかるが、今後は日本に移すことにする」と舛田氏は述べた。

今回の出来事が業績に与える影響について聞かれると、「信頼回復に努め、足元をしっかり対応していきたい」と話した。

(王文亮)

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