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【漢詩の楽しみ】暮 春(ぼしゅん)

 數間茅屋鏡湖濱、萬巻藏書不救貧、燕去燕來還過日、花開花落即經春、開編喜見平生友、照水驚非曩歳人、自笑滅胡心尚在、憑高慷慨欲忘身

 数間の茅屋(ぼうおく)鏡湖(きょうこ)の浜(ひん)、万巻の藏書貧を救わず。燕は去り燕は来りて還(ま)た日を過ごし、花は開き花は落ちて即(すなわ)ち春を経たり。編(へん)を開けば平生の友を見るを喜び、水に照らしては曩歳(のうさい)の人に非(あら)ざるを驚く。自ら笑う、胡を滅するの心尚(なお)在りて、高きに憑(よ)れば慷慨(こうがい)して身を忘れんと欲するを。

 詩に云う。小さくて粗末な我が家は、鏡湖のほとりにある。そこに万巻の書物はあるけれど、それがこの貧乏を救う助けになりはしない。昨秋去った燕が今春また帰ってきたように、私も無駄に日を過ごすなかで、花が咲き、花が落ちて、これで今年の春も過ぎた。書物の一編を開けば、そこに平生の親しい友人を見るように喜ぶが、水に我が顔を映せば、年老いて、まるで昔の自分ではなくなっているのに驚くばかりだ。我ながら、おかしくなる。北方の夷(えびす)を撃滅せんとする士気が、この老いぼれの体内にまだあって、高い所に登った折などには、慷慨のあまり、我が身のことなど忘れてしまおうとするのだよ。

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