心のダメージ(2)
ジェニーは長い間、てんかんの他にも重いうつ病を患い、不眠症と悪夢に絶えず苦しめられていました。薬を飲み続けていますが情緒が不安定で、いつも緊張した生活を送っていました。彼女の家族、友人、同僚も彼女のペースに巻き込まれていました。彼女は物事に対して極度に敏感で、人の話の裏に深い意味が隠されていることをいつも疑っています。彼女の幼な友達はみな、彼女の性格を知っています。彼女はなんとか自分の性格が変わるよう努力しましたが、幼少時代の心の傷が深すぎて、そこから抜け出すことがで出来ませんでした。
西洋の心理学的な治療法としては、患者に薬を処方したり、患者の話にじっくり耳を傾ける他に、心の中のうっ憤を発散させるために枕を思いっきり叩かせたり、人のいないところで大声で叫ばせたりします。主治医はジェニーの心の傷を徹底的に治すために、彼女の継父の追悼会を開かせました。ジェニーの記憶から継父の存在を抹消させるためです。それはもちろん本物ではなくバーチャルでしたが、追悼会のプロセスは本物と全く同じ形をとりました。ジェニーの友人と同僚を招き、柩の安置部屋に蓋を被せた棺桶を置きました。追悼会で、ジェニーは長い弔辞を読み上げ、皆で継父の思い出を語りました。継父とのトラウマを葬り去るようにしたのです。
彼女の夫は、いつも彼女のそばにいました。不思議なことに、彼の顔立ち以外、話し方、習慣、趣味、工具を並べる順番などが、彼女の継父に良く似ていたました。昔、継父は金曜日には魚しか食べてはいけないというルールを作りましたが、ジェニーはそれに反抗し、魚を全く食べませんでした。一方、ジェニーの夫のマルクは金曜日になると家でいわしを食べたり、こっそり外のレストランへ行って魚を食べたりして全く気にかけていませんでした。相変わらず毎週金曜日になると、家の空気はとても重苦しく暗くなりました。