日本の戦略外交、中国共産党をすでに追い込んでいる 内政にも注力すべき

日本の外交政策は着実に中国共産党を追い込んでいる。日米同盟を主軸とし、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を掲げて、他の民主主義国とも良好な関係を構築することに成功した。今や日本は、中国共産党が輸出する「赤い革命」に対抗できる中流砥柱(ちゅうりゅうのしちゅう)となっている。しかし対中人権非難決議案が採択に至らなかったことからもわかるように、日本国内の意見はまとまりを欠く。中共の浸透工作を除去するため、そして、これらに対する国民の危機認識を高めるための施策が急がれる。

着実に成果を出す日本の戦略外交

孫子は言った。「最も良い戦略は敵の謀略を謀略の段階で破ること(伐謀)、その次は敵の外交関係を分断させること(伐交)」。大国間戦争がしばらく起きていない今日において、外交が一種の「戦い」となっている。そして日本が十数年来行ってきた対中共包囲網の構築は、まさしく孫子の言う「外交関係の分断」である。

近年の日本外交を見れば、自由や民主主義を重んじる国々と強固な関係を築き、中国共産党を囲い込む動きは顕著だ。とくに「自由で開かれたインド太平洋」を提唱する安倍晋三政権時代からは、中国共産党の野心的な拡張主義を抑制する動きが顕著に進んだ。

日本、アメリカ、オーストラリア、インドの四か国による安全保障戦略枠組み「クアッド」の復活は、象徴的な出来事だろう。中国共産党は政権を簒奪(さんだつ)したあと、ソ連から受け継いだ「赤い革命」の灯を東南アジアへと積極的に輸出した。ベトナムやカンボジア、北朝鮮では相次いで共産主義政権が成立し、自国民を迫害した。日米豪印による「クアッド」は、ちょうど共産主義の進出を食い止める形勢をなしている。

さらにドイツやオーストラリア、イタリア、インド、フィリピンなどとの防衛技術協力「防衛装備品物品・技術移転協定」の締結もなされた。

菅政権およびバイデン政権にそれぞれが移行した後も「日米同盟のかつてないほどの強固な結びつき」は首脳会談後の声明で強調されている。自衛隊は国内においてフランス陸軍、米海兵隊との合同訓練を実施するなど、欧米諸国との安全保障協力は活発化している。今年の晩夏には英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が横須賀に来航し、インド太平洋地域において多国間訓練の実施を予定している。

大紀元の評論家・王赫氏が今年4月に記した論考によれば、日本は戦略的な外交の成功により、国際的な安全保障上の連帯を固めている。反対に中国共産党は孤立状態に陥り、今まで通り思うままに振る舞うことができなくなっていると指摘した。

王氏は、日本はまさに孫子の兵法にある「伐交」を実践しているとみている。これは、技術や資本を外資に依存する中国共産党体制にとって、怯えさせる戦略であるという。

灯台下暗し、内政を整え足場を固めよ

しかし社会主義や共産主義がはびこる現代において、外交上の成功だけでは必要十分とは言い切れない。孫子でも、国家を内部から崩壊させようとする邪悪な手法や、想像を超えるほど非人道的な政権が現れることを予知できなかったかもしれない。

それはまさしく共産主義であり、歴史に唾棄されたと思われがちな「共産主義インターナショナル」的勢力だ。共産主義の親玉である中国共産党は「統一戦線工作」を世界中で繰り広げ、脅迫と経済的誘惑で大物政治家や起業家を取り込んだ。そして共産主義的思想は姿かたちを変えて、各国の内部分裂と内部崩壊を誘発しようとくすぶっている。

近年、西方諸国では中国共産党による浸透工作が次々と暴かれている。同様の工作が、日本に対しても仕掛けられていると考えるのが合理的であろう。

今期の国会で、中国の人権問題を非難する国会決議が見送られた。中国共産党による人権侵害が国際社会でも重要な課題に移行するなか、日本ではなぜか国内の足並みが揃わない。

「別に特別な思いはありません」。国会閉会間際の6月15日、自民党二階俊博幹事長は、対中人権問題非難決議について党内記者会見で述べた。「前後を考え、相手国のことを考え国会議員として責任をもって議論をしていけばいい、その議論の結果に基づくわけですから」。この後に開かれた自民・公明の幹事長・国対委員長会議(いわゆる二幹二国)により、決議の見送りが決まった。

全会派一致を必要とする国会決議について、ウイグルやチベット、香港の団体代表者らは、積極的に国会議員に働きかけを行なっていた。いっぽう、事情を知る関係者は、中国共産党もまた議員に対して決議が通らないように働きかけを行っていたのではないか、と推察している。

実際、日本と中国の関係の強化を促すような動きが、決議に向けた数か月の間に複数回あった。具体的な例を提示することは控えるが、中国共産党統一戦線は対日工作として「対話促進」「特別チャネルの維持」などを持ちかけていることがわかっている。こうした中国共産党のアプローチに、一部の与党幹部は呼応している。

しかし中共に惑わされている人々は気づかなければならない。中共こそ、羊の皮を被った狼であり、共産党に協力した者でも、用済みとなれば悲惨な結末をたどることを。

対中非難決議案の推進に尽力してきた長尾敬議員は、次の国会でも同様な決議案の採択に取り組むとの考えをツイッターで表明した。日本政府と議会には、中国共産党を国際社会から切り離す「伐交」だけではなく、各種工作とその先にある陰謀を根こそぎ抜き取る「伐謀」の実現を期待したい。

(王文亮、佐渡道世)

関連記事
中国が暗黒時代に突入したようです。11月に入り、公共の場で無差別殺傷事件が急増し、珠海市での車両による大量殺傷事件も含め、社会に衝撃を与えました。数日間で複数の場所で無差別攻撃が発生し、多数の死傷者が出ています。政府の無力さに対する市民の絶望が顕著になり、社会的不公正が根底にあると指摘されています。中共は滅亡へのドアが開いているようです。
アルゼンチンのミレイ大統領が経済「ショック療法」で奇跡を実現。赤字を黒字に転換し、インフレを大幅に抑制。トランプ氏もこれを参考にし、政府効率化に着手か?アメリカ経済への影響を分析。
トランプ氏が再選され、外交戦略を展開。友人のマスク氏がイランと秘密会談を実施し、米イラン関係の改善を目指す新たなアプローチを模索しています。イランはトランプ暗殺未遂の背後にいたはずだが、トランプの凄さはそれさえも乗り越え、対極を動かそうとするところ。
インフレの深刻化に対し、政府支出削減、規制撤廃、経済成長促進が鍵となる。アルゼンチンの改革事例を参考に、迅速かつ大規模な経済政策が必要だ。時間が限られる中、政治的決断と具体的行動が求められている。
多くの大企業がDEI(多様性、公平性、包括性)イニシアチブを停止し、社会的活動から撤退する動きが強まっている。これにより、企業は再び株主価値や顧客サービスに注力し、効率的な運営に焦点を当てるようになった