玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする(新古今)
歌意「わが命よ。絶えるのなら、いっそ絶えてしまえ。このまま生きていると、人に知られまいと努めてきた忍ぶ恋が、秘めていられなくなるかもしれないから」。
式子内親王(しょくしないしんのう)の有名な歌です。
後白河院の娘である式子(しきし、のりこ)は、未婚のまま、神に使える斎院(さいいん)として、10歳から19歳ぐらいの期間を賀茂神社に出仕します。斎院を引退した後も独身を守る慣習(例外あり)にしたがい、式子も歌を生涯の伴侶として、53歳までの余生を過ごします。
歌に詠んでしまっては「忍ぶ恋」にならないのですが、それは大きな矛盾にはなりません。歌人とは、そういう表現者なのですから。
(聡)
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