旅立ちの日【季節の便り】
5月16日は、松尾芭蕉が奥の細道へと旅立った日(元禄2年=1689年)です。
「舟越道子さん」【私の思い出日記】
私は、小学生の頃、祖母が購読していた雑誌「婦人之友」(自由学園創設者の羽仁説子創刊)が毎月届くのが楽しみで、そこで紹介されている文化人やその家族にひそかに憧れ続けたものでした。
【歌の手帳】つつめども
つつめどもかくれぬものは夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
【歌の手帳】夢のあと
夏草やつはものどもが夢のあと
【歌の手帳】書き終えて
書き終えて切手を貼ればたちまちに返事を待って時流れだす
【歌の手帳】行きなやむ
行きなやむ牛の歩みに立つちりの風さへあつき夏の小車
【歌の手帳】夏の野の
夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ
【歌の手帳】風は清し
風は清し月はさやけしいざともに踊りあかさむ老いの名残に
【歌の手帳】夕されば
夕されば物思まさる見し人の言問ふ姿面影にして
【歌の手帳】閑古鳥
うき我をさびしがらせよ閑古鳥
【歌の手帳】夏山の
夏山の夕下風の涼しさに楢の木陰のたたま憂きかな
【歌の手帳】わぎもこが
わぎもこが汗にそぼつる寝より髪夏の昼間はうとしやと思ふ
【歌の手帳】行くは誰が背
防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思もせず
【歌の手帳】古井戸や
古井戸や蚊に飛ぶ魚の音くらし
【歌の手帳】いでそよ人を
有間山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
【歌の手帳】めぐり逢ひて
めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月影
【歌の手帳】真間の手児名
葛飾の真間の手児名がありしかば真間の磯辺に波もとどろに
【歌の手帳】筒井筒
筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
【歌の手帳】玉の緒よ
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
【歌の手帳】歯にひびく
掬ぶよりはや歯にひびく泉かな
【歌の手帳】夏と秋と
夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへ涼しき風や吹くらむ
【歌の手帳】かたつむり
かたつむりそろそろ登れ富士の山
【歌の手帳】はちす葉の
蓮葉のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく
【歌の手帳】山が遠ざかる
また見ることもない山が遠ざかる
【歌の手帳】夕立の空
よられつる野もせの草のかげろひて涼しくくもる夕立の空
【歌の手帳】信濃なる
信濃なる千曲の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ
【歌の手帳】あぢさゐや
あぢさゐや雨音だけの坐禅堂
【歌の手帳】海ならず
海ならず湛へる水の底までに清き心は月ぞ照らさん