夕されば物思(ものもひ)まさる見し人の言問ふ姿面影にして(万葉集)
歌意「夕暮れ時になると(昼間よりも)物思うことが増してきます。お目にかかったあの殿方の、私へ問いかけるお姿が、面影となって立ち現われてきますから」。
笠女郎(かさのいらつめ)。奈良時代の女流歌人です。この頃は、約300年後の平安時代とは違って、詩歌に見られる女性の愛情表現が、ずいぶん動的でストレートであるように思います。
笠女郎も、そんな女性だったのでしょう。歌中の殿方(たぶん大伴家持)への恋心はあふれるほどなのですが、それにじっと耐えて、自制している姿が目に浮かんでくるようです。家持よりも、笠女郎のほうが年上だったと推測されます。
夏の夕暮れ時に、あなたは誰を思いますか。
(聡)
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