中国建築上の十の奇跡(九) ―莫高窟

仏教芸術プロジェクト

中国では5千年の間、神伝文化が栄えていきました。人々は何千年もの間、神々や佛を信奉し、身を修め、穏やかな性格を培ってきました。信仰は中国国民の道徳を維持するための基盤であり、文化と切り離せないものです。漢王朝、即ち紀元前に、仏教はインドから西域を経て中国に伝来しました。その後、中国仏教を形成し、中国文化への影響は非常に大きいのです。仏教の物語は多くの場合、絵画や塑像の芸術として表現されています。中国甘粛省敦煌市近郊にある仏教遺跡・莫高窟は十数王朝にわたって造営と修繕が続けられたもので、仏教芸術の最高峰であるともいえます。

世界で現存する最大かつ最も豊富な仏教芸術宝庫―莫高窟

莫高窟は中国甘粛省敦煌市の南西25キロメートル、鳴沙山の東麓の断崖にあります。宕泉河に隣接し、東に向き、南北の長さは1600メートル、高さ50メートルと、5階建ての建築物です。五胡十六国時代(紀元336年)に、莫高窟は建てられ始め、五胡十六国、北朝、隋、唐、五代、西夏、元を含む十数王朝にわたり、建設が続けられました。

紀元前二世紀、漢王朝の武帝は張騫を西域の使者として派遣し、中央アジアと西アジアへの陸上輸送の「シルクロード」を開通しました。敦煌は昔からシルクロードの重要な拠点として、かつて非常に繁栄しており、中国と西アジアの間の文化交流の架け橋としての役割も果たしていました。これは敦煌の石窟芸術が外国の芸術と中国の民間芸術を融合した理由の一つです。

敦煌には750余りの洞窟があり、隋と唐王朝は莫高窟の造営の全盛期でした。時代を経て、現在、300余りの洞窟がまだ残されています。敦煌石窟芸術の中で最も数量が多く、豊かな内容を持つのは壁画であり、総面積4500平方メートルに及びます。その中で最も多いのは、各種の佛、菩薩、天王、神々を題材とした壁画です。また、当時社会の人々の生活実態、古代建築、音楽、ダンスなどの様子も描かれています。

莫高窟の岩質は粗く、彫ることが出来ないため、職人たちは塑像を作りました。合計2415点の塑像があり、仏教人物及び修行、涅槃の史跡が比較的に多いです。最近、敦煌の蔵経洞と呼ばれる石窟の中から5万点以上の古代文化遺物が発見されました。

敦煌芸術は比類のないほど豊富です。創作された作品には、高さ十数メートルに達した雄大な仏像もあれば、10センチほどしかない精巧な菩薩像もあり、独特な個性を持つ単一の人物画などもあります。敦煌の芸術水準は非常に高く、現存する規模は世界で最も大きく、内容が最も豊富な仏教芸術の聖地であり、「東方芸術の明珠」とも称されています。

因みに、莫高窟に記録された多数の供養者像、絵画、写本によると、これらの供養者像は社会の様々な階層の出身で、中には、王朝の君主、貴族、役人、将兵、画工、石工、僧侶、商人、一般庶民までいます。これは信仰が中国各王朝の社会に広く深い影響を及ぼしていることを示しています。

(作者・羅瓊/翻訳編集・千里)