ローマ帝国の崩壊から二千年が経過したが、当時の多くの古代建築は今なお完全な形を残している。パンテオン(Pantheon)、スペインのセゴビア(Segovia)の水道橋、イギリスのローマ浴場(Roman Baths)など、壮麗なランドマークが現在も堂々とそびえ立っている。
これらの構造物の鍵は、古代ローマ人が使用した独自のコンクリートにある。完全な配合の詳細はいまだ不明だが、研究によって、この素材が極めて高い耐久性を備えており、雨水の侵入後にも自己修復する能力を持つことが判明した。
ローマコンクリートの秘密
『ライブサイエンス』誌(Live Science)は、オレゴン大学准教授ケビン・ディカス(Kevin Dicus)氏の見解を紹介して、ディカス氏は「コンクリートこそがローマ帝国の基礎を築いた」と語る。重要な成分の一つは火山灰(Pozzolan)であり、古代ローマ人はナポリ近郊のポッツオーリ(Pozzuoli)からこの灰を採取し、帝国各地に運搬した。火山灰に含まれるシリカとアルミニウムは、石灰と水と反応し、常温でも硬化し水中でも固まる構造を形成する。
もう一つの重要な要素は、コンクリート内に残る「石灰クラスト(Lime Clasts)」である。これは、完全には反応していない生石灰の小片であり、コンクリートに亀裂が生じた際、水と再反応して方解石を生成し、亀裂を自然に埋めていく。たとえば、ローマ近郊にあるカエキリア・メテッラ(Caecilia Metella)墓では、約二千年前に築かれたコンクリートの亀裂内部に、自然に生成された方解石の結晶が確認された。
2023年に発表した研究で、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、この現象が「ホットミキシング(Hot Mixing)」と呼ばれる古代の技法に由来すると指摘した。この技法は、火山灰、生石灰、水などの材料を加熱しながら混合するものであり、現代の消石灰法とは大きく異なる。ホットミキシングによって石灰のクラストが残され、それが再反応と急速な凝結を促進し、ローマコンクリートに高い耐久性と自己修復性をもたらした。
一方、現代のポルトランドセメントでは、製造過程で石灰を高温で焼成し細かく粉砕するため、クラストが残らず、自己修復能力も持たない。
ローマ人が自らの技術原理をどこまで理解していたかは定かではないが、その成果は明白である。ディカス氏は「今日、ローマの古い壁に触れると、それが二千年前に打たれたコンクリートであると感じ取れ、今もなお堅牢である」と述べた。
これに対し、現代のポルトランドセメントの一般的な寿命はおおよそ75年から100年に過ぎない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。