中国共産党がヒップホップ利用 若者引き寄せを狙う プロパガンダ多様化
8月19日、「チベット解放70周年」の記念式典に際して、汪洋(おう・よう)全国政治協商会議主席はポタラ宮前に、「共産党なくして新中国なし、新チベットなし」という趣旨の演説を行った。同日、チベット出身の若者が『あなたに捧げるラップ』という党政策を賛美するヒップホップの楽曲を発表。専門家は「中国共産党は若者世代を惹きつけるために、ラップなどの新しい表現形式を利用している」と警告を発している。
チベット高原の不毛地帯が緑地に変わっていく様子を描き、痩せた土地が高層ビル群と変わるー。『あなたに捧げるラップ』は、共産党主導の経済成長を讃えている。これに先立ち、中国共産党結党百周年の際、数人のラッパーは中国共産党100年を祝う楽曲『百年』を演出した。
ラップは1970年代初め、ニューヨークのサウス・ブロンクス地区から生まれたと言われている。中国政府はかつて、ラップなどのヒップホップ文化をアンダーグラウンド文化とし、反体制的なメッセージが含まれやすいと考えていた。2018年、中国政府はラッパーや刺青のある芸能人をテレビやラジオに出演させないという方針を示した。
しかし、最近では、共産党のイデオロギーが含まれているヒップホップソングが中国ではしばしば流れる。イギリスのノッティンガム大学の政治学・国際関係学の准教授で、中国問題を専門とするジョナサン・サリバン博士はVOAの取材に対して、「従来型の宣伝で、若者やデジタルネイティブ(digital natives)に影響を与えられないと気づいたから」と指摘した。
さらに、「情報やプロパガンダの手段は、インターネット上の伝播や視聴者の嗜好の変化に適応しなければならない。国家や組織のデジタルメディアへの関与が大幅に拡大し、人民日報のような従来型のメディアもコンテンツ制作に新しい方法を採っている」と述べた。
中共の宣伝多様化戦略 若者がターゲットに
ワシントン・ポスト紙は7月、中国はヒップホップの軽快な表現形式を利用して、若者の共産党に対する「親しみ」を育ていると報じた。
ワシントンに拠点を置く国際人権NGO「フリーダム・ハウス(Freedom House)」で中国と香港、台湾を研究するサラ・クック(Sarah Cook)上級アナリストは、「ラップは魅力的なので、プロパガンダとしては効果的だ。何度も繰り返されると、たとえ最初の時は疑っても、無意識のうちにやがて真実だと思い込むかもしれない」と述べた。
クック氏は、中国共産党は国際的な影響力を拡大させるために、対外宣伝の方法を変えつつあるという。「過去5年間で、ラップが中国共産党によく使われるようになった」「ヒップホップを取り入れるは中国共産党の戦略の一部だ。歌、動画、漫画など新しい宣伝形式も取り込んでいる。BilibiliやTiktokなどのプラットフォームを使い、若者を受け入れやすくようにしている」と述べた。
「中国共産党は、ラップはイメージ作りに役立つだけではなく、わかりやすい形でナショナリズムを表現できる、と若者に作成を促している。こういった多様化戦略は中国共産党の上層部からの指示であり、習近平氏が述べた『読者や受け手はいるところに、宣伝がいきわたるべきところに』の実践だ」と注意した。
「中国共産党の戦略の一つは現有の人気アーティストを利用して、党の路線を宣伝させること。自身の作品に共産党の宣伝が含まれるから、共産党はそれが『人民』の声だと逆に利用される恐れもある」と警戒を呼びかけている。
(大紀元日本語編集部)