昔から言われる「読書の秋」は、まさに静かな至福の時間が過ごせるようで、良い響きの言葉ですね。
まさか、そればかり夢中になって「パソコンの秋」「スマホの秋」とは言わないでしょうが、すでにそれらの機器が生活の一部になっている現代人にとって、懸念されるのは目の疲労からくる視力低下と、それを誘因とする全身への影響です。
五臓に関係が深い「目の健康」
台北市にある漢方医院、上璽中医診所の院長・余雅雯氏は、加齢や目の疲労による視力低下の改善に役立ち、ご家庭でもできる方法として「漢方茶、目のツボ押し、眼球運動」の3つを挙げています。
一般的に、老眼の症状は40歳を過ぎるまでは現れません。ところが現代の人は、パソコンやスマホなどの使いすぎのため、35歳ぐらいから老眼や視力低下の兆候が見られます。
漢方医学では「目の健康は、五臓六腑と密接に関連している」といいます。とくに眼の老化は、肝臓と腎臓に起因しているとされますので、これら臓器の状態を良くすることが視力回復への確かな道であると考えられます。
では、漢方でいう五臓(心、腎、脾、肺、肝)のそれぞれの臓器が、目のどこに対応するかといいますと、肝と腎は、眼球の黒目の部分に対応します。
そのため、この臓器が弱っている「肝腎虚損」の人は、黒目の色素が退化して、濁ることがあります。また、このような患者は、髪が白くなる、皮膚が乾燥する、爪が荒れやすくなるなど、目以外の部位にも徴候がみられます。
肺は、眼球の白目に当たります。肺が虚弱な人は、白目の部分が濁って黄色になりやすいのです。
目の周囲の筋肉やまぶたは、脾と胃が司っています。脾胃系は体の水湿代謝の動力であるため、脾胃がよくない場合、目の腫れ、目やにの増加が現れやすくなります。
目を保護する「漢方茶」
目を保護する漢方茶を2種類、ご紹介します。
いくつかの漢方薬茶飲は肝臓、腎臓などの臓腑の機能を調整することができ、視力を保護し、視界を明るくすることができます。
1、補眼茶(ほがんちゃ)
材料はクコ3g、ナツメ5粒、黄耆(キバナオウギ)2g、桑椹(ソウジン、桑の実)2g。
この4種の材料を急須に入れ、熱い湯をそそいで「茶外茶」とします。白米と一緒に炊いてお粥にすると、脾胃を養う効果があります。
2、清熱明目茶(せいねつめいもくちゃ)
材料は白菊、クコ、決明子(ケツメイシ)。
この3種類の生薬を、それぞれ適量合わせ、小鍋で煮出して服用します。
菊花には白菊と黄菊がありますが、目の保養には白菊が適しています。黄菊は、風邪や気道炎の緩和によく使われます。
目の周囲のツボをマッサージ
目の周囲のツボをマッサージして、眼精疲労を改善します。
目の周りには非常に多くのツボがありますが、最もよく使われるのは攢竹と晴明です。
皆さんも長いデスクワークで疲れたときなど、自然に人差し指と中指を眉間(両眉の中央より)に当ててマッサージされているのではないでしょうか。ご存じであるかどうか分かりませんが、この部位が攢竹というツボで、眼精疲労の緩和に効果的です。
その下にある晴明は、その名の通り、視界を明るくするツボです。ものを見すぎて目がかすんだときは、目の内角にある晴明をマッサージすることで目の循環をよくします。
次に、人指し指の関節をつかって、眼窩の周囲のツボを順番にマッサージします。さらに、清潔にした両手をカップ状にして両目を軽く覆い、温めるようにするのも目の疲れをとる方法として効果的です。
簡単な「眼球運動」も試してみましょう
眼球運動を、漢方医学では「運目法」といいます。この運動は、毛様体筋を強化して、眼精疲労を緩和することができます。
オフィスの休憩時間に、窓の前に立ってください。
遠くの山や建物など、遠方の定点を10~20秒間見つめます。
次に、網戸や窓枠など、目の前のポイントを探して、そちらを10から20秒を見つめます。
遠くと近くの定点を、交互に繰り返し見ることで、毛様体筋を動かし強化することができます。
次に、まぶたを閉じて、頭のなかでイメージしながら、眼球を動かして「米」の字を書きます。眼球を8方向に動かすこの方法は、卓球や野球などのスポーツ選手も実践していますが、目の動きを活性化するのに効果があります。
(文・穆簡/翻訳編集・鳥飼聡)
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