GLP-1薬の長期服用で眼疾患リスクが最大4倍 大規模研究が警告

数百万人の患者を対象に3年にわたって行われた追跡調査によると、現在広く使用されている糖尿病・肥満治療薬(GLP-1受容体作動薬)を服用している人は、眼疾患を発症するリスクが最大で2倍に増加する可能性があることが分かりました。絶対的なリスクはそれほど高くないものの、使用者数が非常に多いため、その潜在的な影響は見過ごせないと指摘されています。
 

GLP-1薬で加齢黄斑変性リスクが2倍以上に

アメリカ医学誌「JAMA Ophthalmology」に最近掲載された大規模研究により、「GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RAs)」を服用している患者は、加齢に伴って発症する新生血管性加齢黄斑変性(「nAMD」)のリスクが、服用していない人の2倍以上であることが明らかになりました。新生血管性加齢黄斑変性は、高齢者の失明原因の中で最も多い疾患の一つです。

このGLP-1受容体作動薬には、糖尿病治療薬のセマグルチド(Ozempic)、肥満治療薬のWegovyや経口薬のRybelsusなどが含まれます。

ただし、相対的にリスクは上昇するものの、実際にこの眼疾患を発症する人の割合は依然として低いとされています。調査によると、3年間でこの病気を発症したのは、GLP-1薬を使用している人で0.2%、未使用者では0.1%であり、1,000人中1人多く発症する程度です。それでも、GLP-1受容体作動薬を使用している人は全世界で数百万人にのぼるため、このわずかなリスク増加でも全体への影響は無視できないと研究者は指摘しています。
 

服用期間が長いほどリスク上昇 最大4倍の「用量反応関係」とは

研究チームは、カナダ・オンタリオ州に住む66歳以上の糖尿病患者110万人以上の医療記録を分析しました。追跡期間は2020年1月から2023年11月までです。主な調査対象は新たに発症した新生血管性加齢黄斑変性)の症例で、眼内注射に関連する診療記録をもとに特定されました。GLP-1受容体作動薬の使用開始から6か月後を起点とし、nAMDの発症・死亡・研究終了まで追跡しています。

その結果、GLP-1薬の服用期間が長くなるほど発症リスクが高まることがわかりました。服用期間が6〜18か月でリスクが約2倍、18〜30か月で3倍以上、30か月超でおよそ4倍に達しており、明確な用量反応関係が確認されました。

湿性加齢黄斑変性は、網膜の下に異常な血管ができることで、目の腫れや出血・瘢痕を引き起こし、最終的には視力を失う原因になります。進行が早い疾患ですが、早期発見と適切な治療によって改善が期待できます。

「湿性黄斑変性の治療法は非常に確立されており、最も効果的なのは抗VEGF薬の眼内注射です。これにより、異常な血管の増殖を抑えることができます」と、ニューヨークのKelly Vision創設者でノースウェル・ヘルスの屈折手術主任、ジェームズ・ケリー医師は話しています。また「できるだけ早期に治療を開始すれば、多くの患者さんの視力を維持・改善することも可能です」とも語っています。
 

GLP-1薬はなぜ目に影響するのか

研究によると、GLP-1受容体作動薬は血糖値を急激に下げることで網膜への酸素供給が不足し、体内で血管内皮増殖因子(VEGF)の分泌が促進されて異常な血管増殖を引き起こす可能性があるとされています。その結果、湿性加齢黄斑変性が発症するリスクが高まると推測されています。ただし、研究チームはこの結果について「因果関係」ではなく「相関関係」にとどまることを強調しています。

「これは後ろ向き観察研究であり、GLP-1薬がこのような眼疾患の原因であると断定することはできません」と語るのは、眼科手術医でありCorneaCareの共同創業者兼CEOであるジョヴィ・ボパライ医師です。ボパライ医師はこの研究には関与していませんが、相対的なリスクが高まる一方で、絶対的なリスクは非常に低いと説明しています。
 

専門家が警告 自己判断での服薬中止は禁物

このようなリスクに関する報告がある中でも、多くの医療専門家は「決して自己判断で服薬を中止しないように」と警告しています。糖尿病や肥満自体が深刻な合併症を引き起こす可能性があり、たとえば糖尿病網膜症による失明もその一つです。

ペンシルベニア大学ビジョンリサーチセンターのブライアン・ヴァンダービーク医師は「この研究は患者が注意を払うべき潜在的な新たな問題を示しています。広く使用されている薬剤の安全性には引き続き注目すべきです」と話します。一方、カナダの検眼士で米国の眼科健康番組「Uncover Your Eyes」の司会を務めるミーナル・アガワル氏は「過度に不安になる必要はありません」と強調します。

アガワル氏は「不安を感じている方は、まずは処方した医師と相談し、年に一度は眼科検診を受けてください」とアドバイスしています。「大切なのは薬をやめることではなく、自分の体の状態を理解したうえでリスクを評価し、適切なモニタリングと対策を行うことです」と話しています。

GLP-1薬の主な製造元であるノボノルディスク社も、今回の研究結果を受けて「承認された用法・用量における有益性とリスクのバランスに、引き続き自信を持っています」との声明を発表しています。

(翻訳編集 華山律)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。