日増しに深まる秋。秋を旬とする食物も、色よく日々熟しています。
「秋燥」は呼吸器を痛めます
だいぶ時季は過ぎてしまいましたが、秋の行事である中元は旧暦7月15日です。
中元は、日本では意味もない贈答品のやりとりという奇妙な風習になっていますが、中国ではこれを「鬼節」と呼び、「亡くなった遠い祖先が、現世に生きている子孫に会いに来る日」とされています。
鬼(き)とは亡者の霊魂を指しますが、自分の祖先の魂であれば怖がるべきものではなく、それなりの礼法にしたがって敬意を示さなければなりません。
12世紀に孟元老(もうげんろう)が著した『東京夢華録(とうけいむかろく)』は、かつて大いに栄えた北宋の都・開封の賑わいを今に伝える貴重な記録です。
それによると、中元の前日に、歳時の行事に必要な飾り物を街で購入し、秋の実りを祭壇に供えて、祖先に秋成(しゅうせい)を告げる様子が見られます。祖先への供物には、晩秋の味覚が全てそろっている必要はなく、鶏と鴨の肉、秋が旬の野菜や果物、それに一壺の米酒でよいとされています。
翌日の中元には、新しい麻谷(麻と穀物)を持って田畑のあぜ道に行き、「薦新(新穀を献上します)」と述べて、その天空におわします一族の祖先に感謝と祈りを捧げます。そのため昔の中国では、中元節は「孝親節」とも呼ばれました。
さて、多くの人が秋の季節になると、よく鼻の中が乾く、乾いた咳が出るわりに痰が少ない、肌が乾燥する、などの体の乾燥に関係する各種の症状が出ます。
これは漢方で言う秋の乾き「秋燥(しゅうそう)」のためです。秋燥とは、秋に多い燥邪(そうじゃ)がまねく、乾燥による疾病一般を意味します。
「体を潤す飲食」を心がけましょう
そこで秋の飲食は、滋陰潤肺(じいんじゅんはい)、生津解渇(せいしんげかつ)を原則とします。いずれも「体を潤す飲食を心がける」という意味です。
1、野菜や果物など水分を多く含む食物を摂って、体に水分を補給しましょう。
2、天然の乾燥した食物を多く食べるようにします。例えば、シロキクラゲ、ユリ根、蓮の実、干し貝柱、昆布、クラゲ、セロリ、ホウレンソウ、豆類など。
香辛料の効いた揚げ物などの熱い食物は、脾臓および胃の機能を阻害する可能性があるため、なるべく避けたほうがいいでしょう。
この時期、なかには「上火(じょうか)」という症状になる人もいます。漢方でいう上火とは、乾燥のため体内に熱がこもり、体が不調になることを指します。
その予防法の一つとして、夜寝る2時間前にハチミツ湯を飲み、朝の起床後に1杯の温水を飲むことで、夜間における体内水分の蒸発を補うことができます。
「塩分補給」は必要ありません
昔は確かに「朝は塩水。夜は蜂蜜」とも言われました。ただし、塩水は高血圧との関係があるので、現代の私たちには合わないとお考えください。
人間は睡眠中も基本的な生理活動は行われ、体内の水分を消耗します。ですから、起床後にコップ一杯の温水を飲むのは良い習慣であり、体に必要な水分を補給する効果がありますが、真夏の猛暑の時期ではないので、薄い塩水を飲むことは逆効果になります。
朝は血圧の最初のピークであるため、もし薄い塩水を飲むと、いきなり血圧を上昇させることになり大変危険です。現代人は普段から塩分を取りすぎているので、朝から塩分を補充するのは明らかに「雪に霜を加える」ことになります。ですから、朝起きたら、温水を一杯補給するだけで十分です。
乾燥する秋には、特に気道のケアに注意が必要です。気管支拡張症や結核などの一部の病気は、秋の乾燥によっても再発したり悪化したりします。
冬が来る前に、もう少し続く爽やかな秋を、乾燥に注意しながら、楽しく過ごしましょう。
(文・陳品洋/翻訳編集・鳥飼聡)
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