「更年期以降、なぜ太る?」でも、リカバリーは可能です

台湾の著名な女優・林青霞(ブリジット・リン)さんは今年67歳。
現在は執筆を中心に活動していますが、かつて「男装の麗人」を演じたら右に出るものがいないと称賛された美貌と体形は、今も衰えていません。

更年期すぎの肥満」もリカバリーは可能

そんな林青霞さんですが、近年もう一つの話題で有名になりました。

ちょうど1年前、つまり昨年末には68㎏だった体重を、約6カ月間で56㎏まで減量するという、まさしく「美しく痩せる」理想的なダイエットを成功させたのです。

更年期以降に、なぜ体重が増加するのでしょうか。
その理由については本記事で詳しく説明しますが、たとえ体重が増加しても、主に食生活の改善によって「リカバリーは可能である」ということを、まずは実例にもとづく結論として高く掲げましょう。
 

熟年世代の体重増加「6つの原因」

さて、なぜ男女を問わず年齢とともに体重が増加し、体形も崩れてしまうのでしょうか。
ダイエット専門の栄養士・朱瑞君氏によると、熟年世代の体重増加には以下の6つの原因があると言います。

1、代謝酵素の活性が低下する
体内の代謝酵素は加齢とともに活性が低下し、代謝効率を鈍くさせます。

2、 筋肉量の減少
筋肉量も代謝に影響を及ぼします。筋肉量が多いと基礎代謝率が高くなりますが、筋肉量は加齢とともに減少しやすくなり、それによって基礎代謝率も低下します。

3、 エストロゲンの減少
更年期を過ぎた女性では、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少するため、脂肪が蓄積しやすくなり、腹部肥満になります。

4、 腸内細菌
腸内細菌の状態の善し悪しは、体形に影響を与えます。腸内細菌の状態が悪く、しかも長期にわたって調整していない人は、年齢が上がると太りやすくなります。

5、 体内毒素の蓄積
脂肪細胞は有機化合物の毒素を蓄積し、その多くは脂肪の代謝を阻害します。代謝機能が低下すると、加齢とともに毒素が蓄積し悪循環になります。

6、 長期的な「栄養不足」
若い頃からの食生活が悪い場合、年数が経てば経つほど、不足している「栄養債」がたまっていきます。長期にわたり十分な栄養を摂っていないと、デトックス(解毒)能力に影響するだけでなく、体内酵素の活性も悪くなります。

食習慣の悪い例の一つとして、「加工食品を多く食べる」があります。
加工食品は加工過程で栄養素を失うだけでなく、多くの添加物が加えられるため、体の代謝負担を増やすのです。

更年期を過ぎた女性はエストロゲンの分泌が減り、脂肪が溜まりやすくなり、とくに腹部肥満になります。(Shutterstock)

「多様な野菜の食事」で痩せる
 

年齢の増加を止めることはできませんが、太りにくい体質になるため基礎代謝を改善することは、自分でコントロールできます。

「摂取する栄養素の種類が多くなれば、代謝が上がります」と朱瑞君氏は言います。

代謝を良くするための食事は、デンプンタンパク質を合わせた量よりも、多様な野菜の種類を取り入れて食べることです。

その前提となる食材の質について、いくつかのポイントがあります。

1、新鮮で加工程度の低い食材を食べる
体のデトックス機能を高めるため「新鮮なもの」「素材の原型が残っているもの」「加工程度の低い食品」を選びます。

2、毎日8~10種類の野菜を食べる
野菜の種類や色が多ければ多いほど、多様な栄養素を摂取することができます。
毎日8~10種類の野菜を食べることを目標にしましょう。1回の食事で少なくとも5種類の野菜を食べますが、8種類食べられるのがベストです。

毎食の野菜は、葉物野菜、瓜類、キノコ類、もやし、サヤインゲン、色鮮やかな野菜(ニンジン、ナス、トマトなど)や筍(タケノコ)類などから、広く選択していきます。

野菜をたくさん食べることは、そんなに難しくありません。

自分で料理を作る人は、1つの料理に2~3種類の野菜を使って調理することができます。
1食に2~3品を作れば、需要を満たすことができます。外食する時にも、そうしたコンセプトに沿って注文するメニューを選ぶことができます。
 

食べる野菜の量は「その他の食材の2倍以上」
 

ダイエット専門の栄養士・朱瑞君氏は、多くの受講生を指導しています。

その講義のなかで朱瑞君氏は、次のように言います。
「代謝率を上げるためには、食べる野菜の量を多くしなければなりません。よく、1:1:2の割合と言われます。つまりタンパク質とでんぷん質がそれぞれ1であれば、野菜はその2倍食べるという意味ですが、実は、それでもまだ足りないでしょう」

朱瑞君氏は、野菜の量をもう少し増やして、その他の食材の「2倍以上」を推奨しています。

なお、この場合、カボチャやトウモロコシは野菜ではなく、「でんぷん系の食材」と考えてください。これらを食べる場合、主食を減らします。例えばトウモロコシを1本食べるなら、その回の食事で、ご飯は食べなくていいのです。

減量の過程で、タンパク質やカロリーの摂取が極端に減ると、筋肉が大きく失われてしまいます。

朱瑞君氏は、「若い人も含めて、ダイエットのために食事の摂取カロリーを極端に減らした結果、サルコペニア(筋肉減少)になる人もいます」と注意を促します。

普通、毎回の食事に求められるタンパク質摂取量は「片方の手のひら1つ分くらい」です。
(訳者注:1日に必要なタンパク質摂取量の目安「手のひら1つ」は、日本でも台湾でも、よく使われる表現です。肉や魚、豆腐や卵などを「手のひらに乗る大きさ」で食べることを指します)

毎日の食事で、ボウル2杯ほどの新鮮な野菜を食べましょう。代謝アップに役立ちます。(Shutterstock)

●鍋物は「少し気をつけながら、楽しく食べましょう」

人の腸内で、甘いものや揚げ物は「悪い菌」を増殖させますが、野菜や果物の食物繊維は「良い菌」の増殖を助けます。

甘いデザートや揚げ物ばかりを多く食べて、野菜や果物をほとんど食べないと、腸内細菌の状態が悪い方向へ変わってしまうのです。

このことは、複数の人が一緒に食べる鍋料理にも当てはまります。
一部の人は「鍋物を食べると太りやすい」と思っていますが、実はいくつかの留意点があって、それを守れば大勢で鍋料理を楽しむことができます。

肉の油脂がスープに残っているので、最後のスープはおいしいですが、あまり飲まないでください。

鍋の具材で、野菜はたくさん食べられますが、油で揚げたような加工食品は多く食べないほうがいいでしょう。

熟年世代は、塩分摂取にも注意してください。塩分摂取量を減らすことで、むくみを防ぐだけでなく、血圧を安定させることができます。

このような食事パターンは、やってみれば難しくはないのですが、習慣づけられるまでは自制心が必要になります。
きちんと食べて「美しく、健康的に痩せる」を実現しましょう!

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)