米国の新しい研究により、ピーナッツアレルギー児にピーナッツ経口免疫療法を実施すると、この一般的なアレルゲンに対する耐性が改善し、ピーナッツアレルギーを克服できる可能性があること、また、治療を開始する年齢が低いほど寛解率が高いことが明らかにされました。
IMPACTと呼ばれる研究計画では、経口免疫療法は免疫系を変化させる可能性があるため、免疫系がまだ成熟していない人生の早い時期にピーナッツの経口免疫療法を行うことにより、子どものピーナッツに対する免疫反応が変化する可能性があると結論づけています。
過去に行われた2つの研究により、ピーナッツ経口免疫療法は、非常に幼い子供に安全に投与でき、かつ治療効果が得られることが実証されています。
この臨床試験は、米国国立衛生研究所(NIH)の資金提供により、米国内の5つの学術医療センターにおいて、ピーナッツアレルギーを持つ1歳から3歳の乳幼児と小児146人を対象に実施されました。このうち、96人の子どもにはピーナッツプロテイン粉を1日2g(ピーナッツ約6個分)ずつ増量してランダムに投与し、50人の子どもにはプラセボ対照としてオート麦粉を投与しました。 治療期間は2年半でした。
その結果、ピーナッツの経口免疫療法を受けた子どもの70%以上(71%)が脱感作(過敏性が減弱)され、ピーナッツ16粒相当の用量に耐えることができたのに対し、プラセボ群では2%でした。また、ピーナッツ粉を投与した子どもの21%が寛解し、ピーナッツ6~12粒程度の用量に耐えることができたのに対し、プラセボ群では2%という結果が出ています。
また、試験開始時の年齢が低いほど、ピーナッツアレルギーの子どもの寛解率が高いこともわかりました。 このデータによると、1歳で治療を開始した子どもの71%が寛解を達成したのに対し、2歳では35%、3歳では19%でした。
「非常に早期の介入は、寛解を達成するための最良の時期を提供するかもしれない」と研究の共著者であるステイシー・ジョーンズ氏は述べました。
この調査によると、米国では約2%(約150万人)の子どもがピーナッツアレルギーであることが判明しています。これらの子どもたちにとって、ピーナッツに対するアレルギー反応は生命を脅かす危険性が高く、そのほとんどが生涯にわたってピーナッツアレルギーを持ち続けることになります。
ピーナッツ粉を投与されたほぼすべての子どもたちが治療中に少なくとも1回のアレルギー反応を示しましたが、ほとんどは軽度から中等度の反応でした。この研究は厳重な医学的管理のもとに行われ、2年半の治療期間中に、ピーナッツ粉に対する35件の中等度反応に対して、21人の小児が救助薬エピネフリンを投与されました。
この試験結果は、1月22日付の国際的な医学雑誌「The Lancet」に掲載されました。
(翻訳・里見雨禾)
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