品質で勝つ
徽州商人は非常に商売の評価を重視するため、商品の品質への要求も高かったのです。清時代の末期に、徽州で最も有名な、胡開文墨店の2代目である胡玉徳は、水に浸しても崩れない墨を作りました。
その墨を買った客が、帰宅途中に不注意で、墨を水の中に落としてしまいました。水からすくいあげると、墨の塊が溶け出していることに気づき、すぐに胡玉徳のところに戻ってきました。
胡玉徳は、すぐに1袋の高価で有名な墨塊を送りました。そして、すべての支店にこの新しい墨の販売を直ちに停止させ、これらの規格外の製品をすべて廃棄するよう命じました。
さらに、すでに販売された墨も、高値で買戻したのです。こうした対応により、経済的な損失はありましたが、商売の信用は保たれ、経営を継続できたのです。
徳を基礎とする
徽商は「徳行」も重視し、自分だけではなく、人材を選抜する時にも「徳」で人を選ぶと同時に、「才」も非常に重視しました。
特に技術を必要とする産業では、競争に勝つために、徽商は大金を惜しまず、腕のいい職人を自分の部下に雇うこともありました。
たとえば、前文の胡開文の墨店の創業者である胡天注は、義理の父の事業を受け継いだ当初、店は廃業寸前の状態でした。しかし胡天注は、生産の拡大を急がずに、熟練した職人の雇用と、最高級の原材料の購入に資金を投入しました。
それ以来、胡天注とその後継者たちも、優秀な人材の確保を、事業の最も重要な課題として取り組みました。当時、徽州の有名な墨金型彫りの彫刻職人や、墨作り職人は、皆、胡開文の墨店で働いていました。
しかも、職人たちが作った墨は、1915年のパナマ・太平洋万国博覧会で金賞を受賞し、「胡開文の墨店」は一躍有名になったのです。
徽州商人は、儒教の思想に則って人選しただけではなく、人と接する時も儒教の思想である「寛容な心」を守っていました。従業員が献身的に働けるように、徽州商人は従業員を大切に扱い、心を配りました。
たとえば、徽州商人の程君は、部下にとても親切です。もし、事業で損失が出たら、彼は従業員を罰するのではなく、問題を見つけて教訓を学び、次の事業で埋め合わせするようにしました。
事業で利益を上げた従業員には、程君は多額のボーナスを与え、事業の運営での積極性を奨励します。当然、そのような寛大な上司は、従業員から好かれ、その結果、多くの人々が競って程君の所を志望するようになりました。
徽商に誠意と寛容さがあるからこそ、優秀な人材が集まってくるのであり、その結果、徽商のコミュニティは相乗効果を発揮し、経営の発展と成長を続けていたのです。
(翻訳・李明月)
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