「もち米」は、日本式のお餅のほかに、おいしい「ちまき」や「おこわ」も作れるなど、食文化の演出ができる夢のような食材です。
台湾では、もち米をつかった「油飯(ヨウファン)」という料理が有名です。
これは、もち米に豚肉やシイタケなどの具材を加え、油で炒めてから蒸すもので、「台湾式おこわ」という名前で日本でも知られています。台湾では、日常よく食べられるほか、祝い事でも大量に作られて周囲にふるまわれます。
さて、そのようなもち米ですが、今の日本では、お餅や和菓子に使われるくらいかもしれません。一般的には、わざわざもち米を買ってきて調理する機会は、少ないようです。
一方、台湾では、もち米はその栄養価の高さから、体力が弱ったときの食事療法にわざわざ選んで使われるほど優れた食品なのです。
表面が不透明で、乳白色のもち米は、アミロペクチンを含み、糊化しやすく、粘り気が強いのが特徴です。
特殊な用途としては、糊化させたもち米と砂を混ぜ、強度の高いモルタルとして歴史的建造物の材料にするという例もあります。万里の長城が、今もなお屹立しているのは、「もち米モルタル」無くしてはありえなかったことです。
もち米には、薬用価値もあります。
米は一般的にインディカ米(長粒種)、ジャポニカ米(短粒種)、もち米の3種類に分けられます。インディカ米やジャポニカ米に比べて、もち米は最も栄養価が高いとされています。
もち米は脾胃(脾臓と胃)を温め、下痢や頻尿を改善することができます。
例えば、高齢者の下痢が(細菌性の原因ではなく)胃腸の虚弱や冷えによるものであれば、もち米のお粥を食べると改善が期待できます。膀胱が虚弱で夜間頻尿がみられる高齢者も、もち米とナツメを煮たお粥を服用すると、良い薬効が期待できます。
もち米は粘り気があるため、消化しにくい面もあります。
そのため、もち米は一般的な白米より栄養価は高いのですが、毎回の食事で食べる必要はありません。
栄養価の高い食べ物は、総じて血糖値を上昇させるグリセミック指数(GI値)が高い場合が多いのです。もち米も同様で、通常のうるち米よりも栄養価が高いぶん、血糖の上昇を早めます。
そのため、食事管理が必要な糖尿病患者は、通常の米飯と同じようにもち米を食べるのではなく、栄養士の指導にしたがって、少量を食べるようにしてください。
そのほか、消化機能が十分でない幼児、および胃腸の消化機能が弱っている人も、もち米を多く食べることは避けたほうがいいでしょう。
油飯(台湾式おこわ)は大変おいしい台湾の名物ですが、歯ごたえのあるもち米に加えて、豚肉などの油脂が多いので、胃がもたれやすい人は少なめに食べるようにしてください。
(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)
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