突然襲う胸の痛みで「このまま死ぬかも?」パニック障害にならないために

陳さん(仮名)は最近、息苦しく、動悸の症状がよくあらわれます。
あまりにも突然で、精神的にもパニック状態になり、どうしていいか分かりません。心拍数が急上昇し、「このまま死ぬかもしれない!」という恐怖を感じるのです。

突然襲われる恐怖

このようなことが頻繁に起きたため、病院へ緊急搬送され、また心臓内科にも行きましたが、身体的な原因は見つかりませんでした。何回かの検査の末、彼女はパニック障害と診断されたのです。

パニック障害は精神障害の一種です。
普段はとくに問題なく生活していますが、全く突然に心臓病のような発作が起きる、あるいは症状が重くて気分が憂鬱になり、精神が不安定になることも多く見られます。

具体的に言うと、以下の13の症状のうち少なくとも4つに該当する場合、医学的に「パニック障害」と診断されます。

13の症状とは、「動悸」「発汗」「震え」「呼吸困難」「閉塞感」「胸痛または胸の不快感」「悪心または腹部不快感」「昏迷または失神」「現実感覚あるいは自己認識の喪失」「自己制御が不能になる恐怖」「死への恐怖」「感覚の異常」「冷感または紅潮」です。

パニック障害の人は、動悸や胸痛が突然起こり、「死ぬのではないか」という恐怖感さえ覚えます。(Shutterstock)
 

しかし上記の13症状のうち、必ずしも4つを満たさなくても、臨床的に明らかなパニック症状があれば、ほとんどパニック障害であると見ることもできます。

 

うつ病」が隠れているかも

さらに注意すべきこととして、パニック障害をもつ多くの患者は、うつ病を併発する傾向が強いことです。

本人がうつ病であり、それが各種のパニック症状の誘因になっていることを、自身も周囲も見落としている場合があります。そうなると、適切な治療や対処の方法が変わってきますので、患者の状況をよく観察する必要があります。

漢方医師によると、うつ病は「肝火(強いイライラ感)が旺盛で、しかも長期にわたったため、鬱結(鬱の気がたまる)して発病する」と言います。

うつ病が軽い時はまだ表面に現れませんが、それが未解決のまま重症化すると、肝火がついに「発火点」に達し、爆発的なパニック障害を引き起こすのです。

さらに漢方医学によると、人が罹患するほとんどの疾病は肝臓、心臓、脾臓、肺、腎臓の「五臓」の系統と関係があります。しかも多くの病気は「肝臓の火」から始まって他の臓器の系統へ伝播し、それぞれの系統のなかで異なる症状を発すると言います。

漢方の診方によるうつ病は、めまい、頭痛、睡眠の質の低下、気分の落ち込みなどの症状があり、これは肝臓の問題を主原因とします。

一方、西洋医学が診断するパニック障害は、胸部圧迫感、胸痛、動悸がみられ、これは「心の問題」による症状と判断します。

しかし例えば、うつ病の原因である肝火が伝播して胃系統に影響を与えると、胃部の膨満感、胃痛、胃腸の不調などが現れます。パニック障害の患者も同様に、胃腸の異常を訴えることが多いので、この両者(二つの病気)は非常に近い関係にあると言ってもよいでしょう。

応急処置は「外関」のツボ押し

いずれにしても、胸部の異常をはじめとするパニック障害の発作が起きたときは、大変辛いものです。

応急的な処置として、急性症状を緩和する特効ツボをご紹介しましょう。
漢方医学でいう三焦(さんしょう)の経絡にある、外関(がいかん)というツボです。(穴は、ツボを意味します)

外関は、左右の手の甲を上にして、手首から肘の方向へ指3本分をとった窪みにあります。
この外関を押して、三焦と小腸の火気(熱のこもった状態)を下せば、胸部の不快感は軽減されます。

外関穴の位置。(健康1+1/大紀元)

注意すべき3つのこと

パニック障害の発症を抑制するため、日頃より注意すべきことは以下の3点です。

1、正常な睡眠をとる

とにかく夜更かしせずに、早く寝るよう心がけてください。

漢方でいう「肝胆経の気を養う時間」は午後11時から午前3時で、これは睡眠の黄金時間です。この間に良質の睡眠をとらず、徹夜すると肝胆(肝臓と胆嚢)を大きく損傷します。

夜更かしせず、十分な睡眠をとることで、パニック障害の発症を抑制できます。(Shutterstock)

2、冷たい水を避ける

この場合、常温の水でも体温より低ければ「冷たい水」とみなされます。

お湯(温水)を飲むと、お湯の熱が体に伝わり、体内のエネルギーが増えます。
冷たい水はその逆で、冷水や常温水を飲むと体の熱が奪われ、体内エネルギーが減少するのです。

病中に冷たい水を飲むと症状が悪化することが多いのは、そのためです。うつ病やパニック障害も体の病気なので、冷たい水を飲むことは、できるだけ避けたほうが良いでしょう

3、食事を規則正しくとる

忙しさに追われる現代人は、長期にわたって「不規則な食生活」のなかにいます。
時間的に遅すぎる食事や、食べ損ねて一食ぬいた生活は、脾胃虚弱および血気不足を招きやすく、臓腑に異常をきたします。

臓腑が弱ると、胃もたれや睡眠障害が起こりやすくなります。
やがて自律神経の失調を招き、精神的な不安定も重なることにより、重篤な場合の典型例としてうつ病やパニック障害を招きます。

食事は、食物の内容と栄養バランスも重要ですが、時間的にも規則正しくとることが必要です。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)