NASA初公開 X線偏光観測衛星「IXPE」が撮影した壮観なる画像
アメリカ航空宇宙局(NASA)のX線偏光観測衛星(IXPE)の慣らし運転が終了し、運用が開始されました。初の観測データとなった超新星残骸の画像では、超新星爆発による衝撃波に加熱されたガスが、可視光線やX線などで輝いています。
2021年9月、IXPEが米国のスペースX社の商業用ロケットファルコン9に搭載され、地上600キロの軌道に打ち上げられました。運用期間は二年間の予定で、一カ月の慣らし運転を経て、ようやく2022年1月からデータ収集を始めました。
現在、IXPEは予定通り運行しており、いままで未知だった珍しい天体現象を追跡しているとNASAは発表しました。
初観測のターゲットとなったのは、17世紀に爆発し、銀河系では最も若い超新星残骸「カシオペア座A」でした。
NASA研究チームが公開した画像は、20年以上前に打ち上げられたX線観測衛星「チャンドラ」が初めて取得した「カシオペヤ座A」の画像データと、この度新たに打ち上げられたIXPEから送られてきた観測データを組み合わせたものです。青色の部分はチャンドラのデータ、マゼンタ(赤紫)の部分がIXPEのデータとなります。
チャンドラX線天文台は、X線領域の「ハッブル宇宙望遠鏡」と呼ばれているほど、当時としては最も大きなX線望遠鏡でした。アメリカ航空宇宙局(NASA)によって1999年7月に打ち上げられてから、ずっと活躍し続けています。
「チャンドラ」と「IXPE」は異なるタイプの検出器を使用して、データを収集しています。特徴あるデータを重ねることによって、質が飛躍的に向上しました。これにより、宇宙のエネルギーを表すデータが得られることが期待されています。
NASAマーシャル宇宙飛行センターのIXPE主任研究員マーティン・ワイスコフ氏は「IXPEによるカシオペヤ座Aの画像は、チャンドラによる同じ超新星残骸の画像と同じように歴史的なものだ」と述べています。現在すべてのデータを解析して、さらなる解明を進めています。
X線は波長が極めて短く、可視光線の1000分の1から10万分の1程度しかありません。波長が短いということは周波数が高くエネルギーも大きいということになり、可視光線の1000倍から10万倍という非常に大きいエネルギーを持つ光は、目には見えませんが、天文学では非常に重要な存在です。
宇宙の中では、ブラックホールや中性子星などの天体の可視光線は観測できませんが、放射している「X線」はたくさん捉えられます。今後、これらの研究を通じ、天体の磁場や形状など希少なデータが得られることが期待されています。
X線は大気圏に阻まれ、地面に到達することはできないので、宇宙に運行している衛星に搭載された機械で収集する方法しかありません。
現在、IXPEの観測データに基づき、カシオペヤ座AのX線偏光マップの作成を進めており、カシオペヤ座AでのX線生成に関する新たな手掛かりが得られると予想されています。
IXPE共同研究メンバーのスタンフォード大学のロジェ・ロマニーさんは
「IXPEのデータを元にX線偏光マップが出来上がったら、『宇宙の巨大加速器』とも呼ばれるカシオペヤ座Aの超新星残骸の構造の解明にきっと役に立つだろう」
「精密に再現できるように、機器を改良し続けている。データ分析による新たな発見を楽しみにしている」と述べました。
IXPEはNASAとイタリア宇宙機関(ASI)の協力で2021年に打ち上げられたX線偏光観測衛星のプロジェクトで、X線天文学においては偏光観測を専門に行う初のミッションであり、2年間行われる予定です。
(翻訳・上山仁徳)