絵の中の時空ーー美術家=物理学者?(五)
視覚における距離と大きさの認識は、空間に関連するだけではなく、時間、速度などの要因に対する人の認識にも関係しています。人間の視覚メカニズムの特徴は、広い視野を持っている時、遠い場所で高速に動いている物体が遅く見え、逆に、そのものに近づく時、それが速く見えるのです。
例えば、拳銃弾の速度は約毎秒300メートルですが、人間の目はこの速度に全く追いつきません。しかし、離陸するロケットの速度は毎秒キロメートルで計算されているのに対し、人間の目は銃弾の速度より10倍以上速いロケットの姿を簡単にとらえることができ、かえって、ロケットがゆっくり飛んでいるように感じます。つまり、異なる空間範囲内にいる時、時間や速度の感じ方も異なるということです。
視界の範囲が異なると、人間の認識にも違いが生じる可能性があります。例えば、昔は、真っ直ぐ歩いて行くと、どんどん遠くなると思われていましたが、その後、衛星写真を通じて、地球が丸いことが分かり、そのため、真っ直ぐ歩き続けると、一周して、再び原点に戻ってくることがわかりました。
関連記事
松の煙から始まり、幾多の試練を経て一挺の墨が生まれる製墨の工程。それは人間の修養や風骨の形成と深く重なっています。苦難を乗り越え、静けさの中で自らを磨き上げる人生の奥深さを描いた珠玉のエッセイです
西暦705年創業、世界最古の旅館・慶雲館。建物や時代が変わろうとも、変わらぬ「もてなしの心」を守り抜く姿から、日本の老舗企業が幾世代にもわたり受け継いできた事業承継の魂と「不易流行」の本質を紐解く
一枚の桑の葉が蚕の体内で絹糸へと変わり、礼制や衣冠文化を支え、五千年の中華文明を紡ぎ出していく。小さな生命の神秘と悠久の歴史の源流、そして万物に宿る秩序と思索を描いた文明論エッセイ
茶道に息づく「一期一会」の精神を、日常の何気ない所作や東洋思想の「仁」と結びつけて紐解くエッセイ。二度と戻らない「いま、目の前の瞬間」に全身全霊で向き合うことの尊さを静かに問いかけます
秋分を迎え、昼夜の長さや季節の巡りから天地の陰陽の調和を読み解く一文。四季の移り変わりを一幅の太極図に見立て、自然の摂理と人の生き方・養生の知恵を深く静かに問いかける