2020年9月22日、記者会見する米連邦捜査局(FBI)のレイ長官 (OLIVIER DOULIERY/POOL/AFP via Getty Images)

米FBIと英MI5の長官、異例の共同演説 中国共産党を名指しで批判

米英両国の国内情報機関FBI(連邦捜査局)とMI5(情報局保安部)の長官は異例の共同演説を行い、中国共産党を名指しで批判した。西側諸国の弱体化を狙い、先端技術を盗むために国家機関全体を動員する中国共産党政権は「我々が直面する最大の脅威」だと指摘した。政治や議会に対する中国共産党の浸透や干渉も話題に上がった。

FBIのレイ長官とMI5のマッカラム長官は6日、商業界や学術界のリーダーとロンドンで会談した。両氏は中国共産党による知的財産の窃盗やサイバー攻撃、浸透工作に言及、同国のスパイによる脅威は増していると危機感をあらわにした。FBIとMI5のトップがそろって公の場で意見を交わすのは初めてという。

中国共産党は「長期的な最大の脅威」

マッカラム氏は「中国共産党は自身の利益に合うように、我々の経済、社会、そして考え方を操ろうとしている。国際秩序を支配できるように、様々な基準や規範を作ろうとしている」と述べた。

英国政府はほかの国々と同様に、中国共産党のスパイ活動の標的となってきた。今年初め、MI5は、中国のスパイが資金調達などを通じて英国議会に広範な関係を培ってきたと警告した。また、英国はジャーナリストを装った数名の中国スパイを追放している。

マッカラム氏は、中国の諜報機関や中国共産党の統一戦線工作部などの組織が「忍耐強く、十分な資金を投入し、偽りのキャンペーンを行って、影響力を行使している」と指摘した。

さらに「中国の諜報機関が欧米人を育成する動機は、主に『友人』を作ることである。いったん『友人』が形成されると、中国はその関係を利用して、合法的・商業的に入手できない情報を獲得し、利益を上げることができる」と強調した。

ターゲットは米国の経済と政治

レイ氏によると、中国共産党のスパイ活動は、航空から農業まで、経済のあらゆる分野をターゲットにしている。昨年には約10万台のサーバーに侵入するなど、米国のインフラに対する大規模なハッキングを行っていると強調した。

レイ氏はまた、中国が「将来起こりうる制裁に対抗できるよう、経済を切り離す方策を求めている」と指摘。西側諸国とのデカップリングに備えることは、台湾侵攻の準備を行っているという手がかりになると述べた。

中国共産党が米国の議会選挙を干渉したことにも言及した。天安門事件に批判的な候補者に対して中国が陰謀を企てた例を挙げ、「中国当局は政治に干渉することで世界を形作ろうとしている」とレイ氏は述べた。

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