コロナの影響で2年間在宅勤務をしていた多くの労働者は、たくさんの悪い食習慣を身につけて職場に戻ってきました。サンドイッチなどの昼食をコンピュータの前に座って食べる事や、間食すること、炭酸飲料の摂取などです。一部の労働者にとって、仕事は食生活や健康に非常に深刻な影響を与えることがあります。
・仕事のストレス
コベントリー大学の公衆衛生栄養学講師で登録栄養士のエイミー・トロファリ氏はBBCに対し、ストレスの多い環境で働くと食事に影響が出ること、感情と食事には強い関連性があることを指摘しました。
「ストレスは体内のコルチゾール(ストレスホルモン)濃度を高め、長期的には慢性的なストレスにつながり、耐糖能(血糖値を正常に保つためのブドウ糖の処理能力)が損なわれたり低下したりして食欲に影響するため、『食欲増進』につながることが分かっています」
また、ストレスでイライラしたり、仕事中に不安になったりすると、甘い食べ物や飲み物で気分を高めようとするかもしれませんが、これは悪循環を招きます。血糖値が急上昇すると、どうしても下がりにくくなり、疲れやすくなったり、イライラしやすくなったりします。
不安定な血糖値は、うつ病や不安神経症などの気分障害にも関連します。気分の落ち込みや不安は、仕事のストレスマネジメントに悪影響を与え、悪循環に陥る可能性があります。
・職場文化
アルスター大学の食品科学技術講師であるカースティ・プールシャヒディ博士は、研究の一環として、宿泊施設やケータリング業界で働く多くの従業員を対象に、勤務中に何を食べ、何を飲んでいるかの調査を実施しました。
あるホテルのシェフは、夜勤のスタッフのためにスープやサンドイッチを用意し、健康的な食事を奨励しようとしましたが、「ほとんどの人が外に買いに出てしまうので、結局捨ててしまった」と語っています。
プールシャヒディ博士は「もし誰かがピザを買いに行きたいと言えば、連れだって一緒に買いに行く人がいる」と付け加えました。職場が外食の選択肢の多い街にある場合や、敷地内に自動販売機がある場合はなおさらです。
しかし、外食や超加工食品に長く依存すると、心身の健康に影響を与えることが知られています。
・休憩
いつも忙しくしていると、仕事中に定期的に休憩を取ることができないかもしれません。中には、やることが多すぎる、休憩時間があまりない、あるいは監視体制がそれを奨励しないなどの理由で、短い休憩時間さえ取れない人もいます。
シフトによって食事が不規則になったり、休憩が不規則になったりすると、上述のように血糖値の変動が起こりやすくなります。不規則な食事は睡眠の質にも影響し、休みなく長時間働くことによる疲れをさらに悪化させます。
さらに心配なのは、忙しくてトイレに行けないため、水を飲むのをためらってしまう労働者がいることです。しかし、軽度の脱水症状(体重の2~3%または5%の水分損失)でも、疲労感や記憶・認知機能・意思決定の障害を引き起こす可能性があります。
・夜勤・交代制勤務
プールシャヒディ博士は、シフト勤務者の食事に特化したいくつかの研究に携わってきました。2020年のある研究では、「シフト勤務者は日勤者よりも太りやすく、特に5年以上シフト勤務をしている人は太りやすいと報告されている」ことが分かりました。
野菜や果物の摂取量が少なく、糖分や飽和脂肪酸の摂取量が多いなど、シフト勤務者は栄養価の低い食事をしているという統計が多くあるとトロファリ氏は説明します。
職場で健康的な食生活を送るためにできることとは?
・計画的に
特に、勤務時間が不規則だったり選択肢が少ない場合は、計画を立てることが重要であると、すべての専門家は考えています。
南オーストラリア大学の栄養士であり博士課程の学生でもある裴彥新氏は、夜勤者は、果物、野菜、全粒穀物、乳製品など、健康に不可欠だが不足しがちな食品を摂取するよう勧めています。
彼女は、仕事中に健康的な食べ物を買うのが難しい人は、次のものを準備することを推奨しています。
「フルーツ、ドライフルーツ、野菜スティック、全粒粉のクラッカーにチーズ、ヨーグルト、牛乳などです。お腹も膨れ、低カロリーで、体に必要なビタミンやミネラルを摂取できる簡単なおやつです」。
・食べる事に集中する
「食べるという作業に意識を集中することの重要性は、ますます多くの研究により証明されています。ゆっくり噛むことで消化を助け、空腹感や満腹感をより意識することができます」とトロファリ氏は言います。さらに彼女は、「意識的にテーブルに座り、食事以外の雑念を排除するように心がける」ことを提案しています。
したがって、仕事のデスクに座って食事をするのはやめましょう。
・自分に合った食事
「みんな唯一無二なのです。 私たちは皆、必要とする栄養素のレベルが違います。したがって、すべてのタイプの労働者に適した食事というのは存在しません。一日中デスクワークをしていると、カロリーをあまり消費しないかもしれませんし、ギリシャヨーグルトなどの高タンパク食品にフルーツを添えたものを優先的に摂取するとよいでしょう」とトロファリ氏は語りました。
・規律正しい食事
プールシャヒディ博士によると、食事はできるだけ規則正しく、夜遅く摂るより一日の早い時間に摂る方が良いとのことです。
どんな仕事でも何はともあれ、「就寝の2時間前からは食事をとらず、体に食べ物を消化する時間を確保することが、質の良い睡眠につながります。カフェインの半分は6、7時間経っても体内に残っています。そのため、就寝前にカフェインを減らすための十分な時間をとることが重要です。
そしてアルコールを避け、水分を十分に摂ることで、疲労感や集中力減退を軽減することができます」とトロファリ氏は語りました。
(翻訳・香原咲)
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