(前稿より続く)
まずは通常の生活改善から
生活習慣上の問題の典型として、炭水化物や甘いものを大量に食べて肥満になれば、確かにインスリン抵抗性が高まり、自身が招いた結果として糖尿病になります。
その解決策は、食後血糖値を急上昇させにくい低GI(グリセミックインデックス)の野菜や果物を多く食べ、精製糖や添加糖の摂取量を減らすことです。
そのほか、以下に挙げるような「患者個人の生活習慣上の問題ではない要因」も、インスリン抵抗性の誘因になります。
ご自身の健康を守るために、これらのことにも、ぜひ注意していただきたいのです。
残留農薬の危険性を知る
先ほど述べたように、野菜や果物は血糖値を下げるため大いに推奨できる食物です。
しかし、例えばリンゴを食べる時、リンゴの残留農薬の危険性を無視して、よく洗わずに食べていることはありませんか。もしそうだとしたら、あなたは意外なところで糖尿病リスクを高めているかもしれません。
日本をふくむ各国の法律で、農産物の残留農薬レベルには上限が設けられています。
しかし、一般の市場に流通する果物や野菜には、多かれ少なかれ残留農薬があることも否定できません。
蓄積される危険因子
食物を介して体内に入った残留農薬は、わずかな量でも排出されず、次第に蓄積されていきます。こうした残留農薬はヒトの血液や体脂肪、あるいは母乳からも広く検出されています。
1999〜2002年の米国全国健康栄養調査では、80%を超える人の血液中に6種類の化学汚染物質が存在していたことが確認されました。そのほとんどが、広く農薬に使用されている塩素系殺虫剤や除草剤によるものであったと言います。
さらに研究者は、血液中の残留農薬レベルが上昇するにつれてインスリン抵抗性が誘発され、糖尿病になるリスクが増大することを発見しています。
それによると、血液中の農薬濃度が中程度の人は、ごく少量である人に比べて糖尿病になるリスクが14〜15倍になると言います。驚くべきことに、血液中の農薬が最も多い人は、糖尿病リスクがなんと38倍にもなるのです。
内分泌を乱す「環境ホルモン」
現代では、どこにでも存在する「環境ホルモン」も、インスリン抵抗性を誘発する原因になります。
環境ホルモンとは、もともと自然界には存在しなかった化学薬品(可塑剤や防腐剤)などが自然環境に浸透し、正常な生態を狂わせて、人間の健康に重大な「異常性」を及ぼすようになったものです。
環境ホルモンを、「内分泌かく乱物質」と言い換えることもあります。
環境ホルモンは、内分泌ホルモンと分子構造が似ているため、それが体内に侵入すると「味方」と誤認され、以後はその指令に基づいて体が作動するようになります。
こうして内分泌系が乱れ、体の正常な機能までが大きく乱されてしまうのです。
米国食品医薬品局(FDA)の調査によると、1800種類以上の環境ホルモンが内分泌を乱すことが分かっています。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンですが、この環境ホルモンの影響を受けた場合、インスリン抵抗性が誘発されて糖尿病リスクが高まることは容易に想像されます。
現代の糖尿病は、従来のそれとは違った要因を持ちつつあるのかもしれません。
(完)
(翻訳編集・鳥飼聡)
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