新疆ウイグル自治区に設置された太陽光パネル(Photo credit should read STR/AFP via Getty Images)

バイデン政権が推す太陽光発電…「中国の人権侵害を進める」=共和党議員

米バイデン大統領政権が成立させたインフレ抑制法(IRA)は、米国にとって過去10年以上で最大の気候変動法となった。グリーンテクノロジーへの資金提供を含め、2030年までの米国の二酸化炭素排出量40%以上削減に向け環境施策を促進させる。

しかし、共和党の硬派議員は、この法律によって中国が生産大国である太陽パネルの輸入量が大幅に増え、中国共産党による「人権侵害を悪化させる可能性が高い」と警告している。

マルコ・ルビオとトム・コットン共和党上院議員、そしてマイク・ギャラガーとクリス・スミス共和党下院議員は5日、書簡を提出し、インフレ抑制法はすでに成立したウイグル強制労働防止法との齟齬が生じると指摘した。

同法では新疆製のすべての製品を、強制労働に関わっていないとする「明確で説得力のある証拠」を業者が提示しない限り、CBPは強制労働によって作られたと見なすよう定めている。

「バイデン政権が策定したインフレ抑制法は、グリーンエネルギーへの依存度を高めるものだ。さらには中国からの太陽光パネルの輸入を大幅に増加させるため、税関国境警備局(CBP)によるウイグル強制労働防止法の執行を困難にする」。議員たちは書簡でこうしたためた。

さらに議員たちは、インフレ抑制法によって、米国の税金が太陽光パネルの補助金、助成金、税額控除で数百億ドルを支払うようになると指摘。「中国共産党による強制労働に助成金を与える恐れがある」と述べた。

再生可能エネルギーの名の下に

米国は、中国共産党が新疆のウイグル人、カザフ人、およびその他の主にイスラム教徒の民族グループに対する大量虐殺や虐待に関与していると主張している。

中国共産党は、世界の太陽光発電設備の製造を一手に担い、その製造に必要な原材料の多くを支配している。ポリシリコン生産などのパネル製造プロセスのすべての段階の80%以上を占め、そのウェーハ(半導体材料)の97%を占めている。

バイデン政権は、中国から調達した部品で東南アジア諸国が製造した太陽光パネルは強制労働に関する調査をしないと決めた。これについて議員らは「米国が強制労働問題に向き合っていないといった、誤ったシグナルを送ることになる」と批判した。

CBPはこれまで隆基緑能科技(LONGi)や晶科能源(Jinko Solar)、天合光能(Trina Solar)の太陽光パネルの輸入を停止している。しかし、ルビオ氏らはこのリストに記載のない企業が「奴隷労働による製造品を輸入するという前例を作るかもしれない」と法の抜け穴を指摘した。

(翻訳・大室誠)

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