壮観!ブラックホールに飲み込まれる恒星の最後 NASAが映像を公開

ハッブル宇宙望遠鏡が恒星がブラックホールに飲み込まれる最後の瞬間を詳細に記録した。NASAは1月12日、この映像を公開した。動画では引き裂かれてブラック ホールに飲み込まれ、ドーナツ状になっている星の最後の瞬間の光景が表現されている。

地表から約600Km上空の軌道上を周回する。ハッブル宇宙望遠鏡は、ブラックホールに飲み込まれる星の最後の瞬間を詳細に記録していた。

NASAが今回の出来事の說明をしている動画では、ブラックホールに近づいた恒星が周回軌道を描きながら徐々にスピードを早め、極限まで高まった時、引き裂かれ、残骸が渦巻状にブラックホールへと吸い込まれ、ついにはブラックホールのまわりに残骸が充満し、ドーナツ状になる様子が紹介されている。

この壮観な宇宙ドラマは「潮汐破壊現象」と呼ばれており、静止した超大質量ブラックホールを中心とする銀河では、恒星の破砕は10万年に数回しか起こらないと推定されている。天文学者はハッブル望遠鏡の強力な紫外線感度を用いて、破砕された星からの光を調べている。

ハッブル宇宙望遠鏡の分光データは、かつて星だった非常に明るく熱いドーナツ型のガスの領域から来ていると解釈されている。この領域はトーラスと呼ばれ、太陽系に相当する大きさで、中央にあるブラックホールの周りを旋回している。

ガスはブラックホールに吸い込まれていくが、一方で、ブラックホールに吸い込まれずに、「風」のように、外に向かって高速で吹き出すガスも存在する。このような「風」の存在はこれまでのX線観測から知られていたが、どのようにして吹いているのかについてはまだ分かっていなかった。

京都大学の水本岬希 特定助教を中心とする研究グループは、2020年11月、X線の擬似観測によって実際に観測されている「風」の様子を定量的に再現し、ブラックホールの周りで生み出される紫外線の力によって「風」が生まれることを世界で初めて実証した。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)のPeter Maksym氏は「われわれは、ブラックホールからの「風」が地表を通過し、それが時速2000万マイル(光速の3%)の速度でわれわれに向かっているのを見ている。われわれはまだ、この出来事を理解している段階だ。星を破砕すると、ブラックホールに流れ込む物質が得られる」と述べた。

Maksym氏は「ここは科学者にとってエキサイティングな場所であり、既知のものと未知のものの接点にある」と興奮を隠せない様子だ。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。