あなたの周りには、悩んでいるときに話を聞いてくれる友人や家族がいますか? 誰かに心の内を打ち明けるのが恥ずかしいと思うことはありませんか? 誰かに聞いてもらうことで、脳の認知機能の低下を防ぐことができるという研究結果が出ています。
研究:誰かに聞いてもらうと脳が衰えにくい
とても有名なミンナン語の歌があります。曲名は《考え事は誰が知るか》、その最初の一句は「自分の考え事を話さなければ、誰が知ることができるでしょうか」というものです。 これは、いまや多くの人が経験したことのある感覚ではないでしょうか? あるいは、「何を考えているのかわからない 」や「私の悩みを知らない」などとよく言われるのではないでしょうか?
これだけコミュニケーションが発達した現代でも、「話し相手がいない」「内心の悩みをどう言い出したらいいかわからない」と孤独を感じがちな人は少なくないでしょう。手遅れになる前に、この状況を変えることが重要です。 脳の老化や神経変性疾患(アルツハイマー病など)が進んでしまいます。話を聞いてくれる人や心の支えとなる人がいることで、こうした脳の変化によるダメージを軽減することができるのです。
これは研究でも確認されています。 今年、海外の知名医学雑誌「JAMA Network Open」に掲載された報告によると、話を聞いてくれる友人や家族がいることで、認知強靭性(Cognitive Resilience)を養い、加齢やアルツハイマー病などの病気による脳の衰えを遅らせることができるとされています。
この研究は、45歳以上の認知症や脳卒中に罹患していないボランティア2171人を対象に行われました。研究者らは、話し相手がいない人の脳容積が1単位減るごとに、認知機能が0.17単位、つまり認知機能が約4.25年分低下することを明らかにしました。一方、話し相手が多い場合、脳容積が1単位減少するごとに認知機能は0.01単位、つまり約0.25年分しか低下しないことがわかりました。
認知機能の重要性は決して軽視できるものではありません。学習、思考、推論、問題解決、意思決定、記憶、注意力などの能力に関わるものであり、脳の体積が1単位減少しても、話し相手が多いほど認知機能への影響は少なく、脳の衰えは顕著ではありません。
この結論は、悩みを打ち明け、さらには率先して良好な人間関係を維持し、親しい友人を増やすことができれば、脳の健康に大きな効果があることを示唆しています。
台湾法務部矯正署高雄リハビリテーションの臨床心理士、柯俊銘氏によると、社会との交流、悩みを打ち明ける相手、話を聞いてもらうことと認知症の予防には強い相関があり、憂鬱から遠く離れると同時に、認知症も予防することができると言いました。
相談相手がいると、体調を崩しにくい?
この研究を主導したニューヨーク大学のランゴン医学センターの神経科学者、ジョエル・サリナス博士は、聞いてくれる人がいることは、脳の認知機能を維持するだけでなく、ストレスホルモンや血管疾患など、健康や加齢に伴うあらゆるダメージを軽減するために良いと指摘しています。ストレスホルモンは、免疫力を低下させ、体の老化を早める原因になります。
悩みを聞いてくれる人がいない、あるいは、誰かに相談するのが嫌だったりすると、プレッシャーを感じてしまい、長く時間が絶つと、心や体に機能不全を起こす可能性があります。 自律神経失調症になる人が増えているのは、実はストレスと密接な関係があると柯俊銘氏は言います。もし誰かが話を聞いてくれて、さらにアドバイスやサポートをしてくれるなら、感情のカタルシスはストレスを軽減する効果があり、その心理は生理的な影響を与えることができるのです。
例えば、新型コロナの流行時には、感染してしまった患者さんが周りの人に感染させてしまうことで、罪悪感を抱く人もいました。こうした人たちが入院した際には、臨床心理士が介入して、患者の罪悪感や不安を和らげるための心理相談が用意されていました。患者さんには、自分のせいではないこと、誰も故意に他人に感染させたわけではないことを認識してもらいます。 この会話によって心理的なストレスが軽減されます。「どんな治療でも、その人が心理的に仕上がっていることが重要で、物理的な治療がプラス効果を発揮するのです」と柯俊銘氏は言います。
(つづく)
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